第19話



その名前に聞き覚えは全くないけど、この好機を私は逃すはずもなく、思いっきり男の手を振りほどいた。



あっさりと離される、自分の腕。




「ぁ、あ…。」




そんな私の行動にも全く意識も向けず、ただ呆然と目を見開く男。



固まったまま、動かない。




あっさりと解放された腕を撫でながら、男の変貌に困惑しながらも、ほっと安堵の吐息を溢す。




「…………、助かった、の?」



良く分からない。




でも、一体、どうして?




「…っ、!」




怪訝に思いながらも、振り返った私も“天野さん”を見て固まった。



隣の、男と同じように。



嘘、でしょう?

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