第17話 波動が上がる

愛の手術まで

あと一週間…


近くの

コミュニティセンターで

講演会があり

聞きに行った

その時にかなり

愛の心に

響く不思議な

話を耳にした


それは

人は『無』の境地に

立たされた時

例えば

ただの石ころが

『ダイヤモンド』に

見えたりするものだ


と話されていた


わぁ〜愛も

そんな体験を

してみたぁ〜い

って思いながら

ひとり妄想していた


いよいよ

今日は手術の日

めちゃめちゃ

緊張する


『麻酔しますね…』

の『麻酔』って言葉を

聞いたと思ったら

もう愛の意識は

閉ざされてしまった…


う〜んん

ぼんやり人の声がする

あっ、そうだった

手術して

もらってたんだった

まだ意識はもうろうと

している


どうやら

手術後の患者は

この場所に移動

させられ

ここで完全看護を

してもらうようだ


周りの人は

本当にさっき

手術したの?って

思うぐらいに

夕食をモグモグ

食べている…


愛はとても

食べられる体調では

なかった


向こうの方から

物凄くキラキラした

ものが近づいてくる

なんだろ?


どうやら

それは愛の所に

運ばれて来ているみたい

ワクワク

ドキドキ…


すると

驚きの光景を

目にする


な·なんと〜!

それは…


『金色のパイナップル』

ではないか


黄色のパイナップルは

見たことがあるが

『金色のパイナップル』

は初めて見た


愛は

めちゃめちゃ

不思議な

体験をしたのだ


でも

感動を

感情表現できるほど

元気では

なかったので


心のなかで

へぇ〜って

感じだった


それから数日…

愛はなかなか

食欲が戻らず、

24時間点滴の

日々…。


さすがにこれでは

なかなか

退院できないと思い


栄養士さんに

食欲があまり

ない患者でも

食べられるメニューを

考えてもらった


果物なら

食べれそうなので

フルーツをメインに

したものを出して

もらうようにした


愛はあの時見た

『金色のパイナップル』

がもう一度見たくて

毎日、待ち望んでいた


退院の最終日

待ちに待った

『パイナップル』が

運ばれてきた


しかし…

普通の黄色の

パイナップルだった


愛はがっかりした


ふと手術前に行った

講演会を思い出した

あっ、無の境地に

立たされないと…

見えないんだった…


でも

あの時ハッキリ愛は

見たのだ

『金色のパイナップル』を

この目で

確かに…


なんとか

無事に退院でき

通常の生活に

戻り始めた


そんなある日の日曜日

天斗が

『眼鏡やさんに行きたい』

というので出かけた


眼鏡やさんに着くと

天斗が

『眼鏡変えてみたら?』

って言ってくれたので

視力を測ってもらって

眼鏡をかけると


えっーーなに?

この世界観〜

愛は驚いた

自分がこんなに

見えない眼鏡を

かけて生活してたことに


実は中学生以来の

眼鏡を

ずっと使っていたのだ


あぁ〜だから

仕事の時も

数字とかの見間違いが

多かったのか…

まさか?

見えてなかったとは…


なんか

何十年ぶりに

新しい眼鏡を

新調できて

まわりの世界が

こんなに鮮明に

見えていることに

感動した



―なんか出世しそう ―



なんとなく

そう感じた愛だった


その後も

天斗が

車、そろそろ

買い替えたら

いいと思って

『リースの車はどう?』

って言ってきてくれて


確かに今の車は

代車よりも

設備が不十分な

エアコン無し

カーステレオ無し

なのはあった


天斗にも

チャンガー車とか

言われて

馬鹿にされてた


リースの車は

新車だし

愛好みの可愛い

丸っこい軽自動車で

色もサーモンピンクで

オシャレだった



―なんかこれ

 どんどん上がってる?―



その時の愛には

ハッキリこれが

なんなのかは…

分からなかったが…


愛が

幸せに成るために

贈り物が

送られてきている

感覚を

感じたのだった



―ステージがアップする

    前触れ?―


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