第10話

「部活以外の知らない下級生とかもいるんでしょ?そういう時はどうしてるのよ?」

「え?だって、クラスと名前ちゃんと聞いてるもん」

「へぇー律儀りちぎーっ。エラいね、雪乃」

「えーっ?だって、貰いっぱなしって何か悪いじゃない」


知らない人程、実際に貰ういわれはないのだし。


「雪乃のそういう優しい所が余計人気を呼ぶんだろうね。その辺の下手な男より気が利くし、何よりカッコイイ!」

「えー?何なのそれ…」


二人笑いながら教室へと入って行くと、既に教室に戻っていた植草と目が合った。


「なに?また貰ったの?高山。相変わらず、すげぇな…」


席に座って貰った包みを手提げ袋にしまっていると、植草が横から覗いて来た。


「よく言うよ。自分だって散々朝から貰ってるくせに」


知ってるんだ。人気者の植草は、朝から同じクラスの子や同学年の子に沢山のチョコを貰ってた。


「えへへ、まあね」


無邪気な笑顔を浮かべる植草。


「でも、さ…」


不意に、そんな笑顔を収めて真顔になった。


所詮しょせんみんな義理チョコだからね。本命に貰えなきゃ意味ないって」


そんなことを言って遠い目をする。


「………」


(そんな切ない顔するぐらいなら、さっさと告白しちゃえばいいのに…)


そう思いつつも、上手く言葉が出て来なかった。





そして、放課後。


「…本当に数えるの?」

「うん。頼むよ」


今日は放課後の部活がない為、帰ろうとしたら植草に呼び止められた。

勿論、例の『願掛け』の件について、だ。お互いに貰ったチョコの数を数えて、その結果、彼は彼なりに覚悟を決めるのだろう。


(上手い具合にサッと帰っちゃえば関わらずに済むと思ったのに…)


出遅れたことを後悔しても今更遅いけど。

そんな重大な決意を、正直こんな自分のチョコの数で決めて欲しくはなかった。


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