バレンタイン・ラプソディ

第1話

「高山先輩、おはようございます!」

「あ、うん。おはよう」


(部活の後輩…じゃないな。知らない子だ)


でも、こんなことはよくあることなので普通に笑顔で挨拶を返すと、彼女は頬を赤く染めて立ち止まってしまった。

途端に、後方から聞こえる黄色い声。


「きゃーっ!高山先輩に朝から挨拶を返して貰えるなんてラッキー!」

「いいなぁー」

「やーんっ!真奈…羨ましすぎるーっ!」


うーん…。朝から何だろう、このテンション。

訳が分からない。だって、ただ挨拶返しただけだよ?




私の名前は、高山雪乃たかやま ゆきの。現在、高校二年生。

昔から、何故だか私は同性の女子にモテる…らしい。

確かに見た目は女っぽいとは、お世辞でさえも言い難く。どちらかと言えばボーイッシュなたぐいに入るのだろうとは思うけれど。


中学時代からバスケ部に所属していて、髪は常に耳出しのショートカット。

そして中学時代に成長期を迎え、伸びに伸びた身長は173センチを超えた。

確かにこれだけ身長があれば、そこらの男子たちとそう変わらない。自分より小さい者も多くいるのが現状だ。

そして、あいにく成長したのは背ばかりで、胸は『気持ち』程度で俗に言う『まな板』状態。確かに女っぽさのカケラもないのは認めよう。

それでも、見た目はどうあれ正真正銘、私は女なのに。

何故、こんな風になるのか自分では理解出来なかった。




「バレンタインが何だって言うんだよ」

「やぁね、モテない男のヒガミはみっともないよ」

「うるせー」


廊下を歩いていると、何処からか聞こえてくるそんな会話。

この時期、校内は来週に控えたバレンタインデーの話題で持ちきりだ。

渡す側の女子は勿論だけど、「バレンタインがなんだ」と言いながらも、そわそわを隠せない男子たちも見ていて分かりやすい程だ。


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