第26話
急にどうしたというのだろう。
(私、何か不自然なことした…?かな?)
実琴は内心で慌てながらも、その鋭い視線を目の前に硬直した。
何を考えているのか読めない瞳。
すると、朝霧がぽつり…と、表情を変えずに呟いた。
「お前…」
(…えっ…?)
何を言うつもりなんだろう?
実琴は、思わず目を丸くした。
だが…。
「メスか…」
『はあっ!?』
瞬時にカチン!と来て。
実琴は、すぐ傍にあったその手にガリッ…っと噛みついてやった。
(最っ低ッ!!)
「つっ…」
突然牙を剥き出した子猫をうっかり取り落としそうになり、慌ててその身体を再び手の中に収める。
「危ないだろっ。落とすとこだぞっ」
一瞬だけ必死さを見せた朝霧に。
『いーーだ!!デリカシーのないアンタが悪いっ!』
実琴は心の中で、あかんべーをした。
小さな子猫の身を心配して慌てて抱えてくれたのは有り難いが、実琴的にはそれどころではない。
(ホント信じらんないっ!!)
朝霧は目を大きくしてこちらを見下ろしていた。
「みーっ!にゃあにゃあみゃあっ!」
「危ないだろっ」と言ったことに反論するように、突然鳴きだした手の中の子猫を物珍しそうに見つめている。
『…なによ。文句ある?』
内心で頬を膨らませながら、実琴は朝霧を睨み上げた。
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