第11話

あまりに自分の中で『猫になってしまった』という答えがすんなり出てきてしまい、実琴は慌てた。


(待て待て。このご時世、そんなことが普通に起こっちゃイカンでしょう?)


半ば混乱しながらも、何とかそこから這い出るが、その場を振り返って今度は固まってしまった。


(ちょっ…何これ…。どういうこと…?)


今まで自分の上に乗っかっていた柔らかいかたまり。それは…。


(これって…人?だよね?随分と大きな…)


今の自分から見たら、まるで巨人のような大きさだった。

それは地面に倒れたまま横になっていて動かないでいる。

髪が掛かっていて顔は良くは見えなかったけれど、よくよく見てみれば、それは先程まで自分が着ていた見慣れた制服を着ていた。


何故だろう…。嫌な予感しかしない。


(だって、この流れからいったら…やっぱり、アレだよね…)


実琴は立ち上がろうとするが、気付いたら四つん這いになっていた。


(あ、そうか。私今ネコだからこれが普通なんだ)


変に納得して、そのままネコのように歩きながら傍まで行くと、その人物の顔を覗き見た。


(やっぱり…。これ、私だ…)


倒れているのは、紛れもない自分自身だった。


何故かは分からない。だが、今自分の身体が目の前にあって、自身は助けた筈の子猫になってしまっている…らしい。


(えーと…、どうしよう…)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る