報復の魔の手(2)
薄暗い倉庫内。
目隠しを外されると同時に夏樹は、ぼやける視界のままに周囲を見渡した。
「ふゆちゃん……。ふゆちゃんは何処っ?」
必死に兄の姿を探す美しい少女の様子に、男たちはニヤニヤと
「焦るなよ、お嬢ちゃん。お兄ちゃんなら、これから来るからさ」
「そうそう、あんたを助けに……ね」
制服のまま床に座り込んでいる夏樹を取り囲むように五人の男たちが見下ろしている。
「アイツらには大きな借りがあるんだ。悪いがあんたを有効活用させて貰うぜ」
「……っ」
夏樹は現在の状況を
こいつらは、どうやら並木や冬樹に恨みを持つ者たちらしい。
(ヤバいな……失敗した。私が捕まったことで逆にふゆちゃんたちを不利な状況にしちゃったみたいだ……)
バイトが終わって家へ向かう途中、突然後ろから突き付けられた拳銃。
確かにふゆちゃんは、今危険な仕事を手伝っている。
きっと、様々な恨みつらみをその身に背負ってしまっているに違いない。
これについては全てが逆恨みだけれど、だからこそ、こういうこともあるのかもと思ったのだ。
(だけど……逆に自分のせいで、ふゆちゃんたちを危険な目に合わせるのだけは、絶対イヤだっ)
何とか抜け出してやる。夏樹は意を決した。
幸いなことに、男たちは夏樹を普通のか弱い女の子だと思っているらしい。
手足を縛られたりはしておらず、身動きは何も制限されていない。
しっかり取り囲まれてはいるものの、この人数なら何とかなるかも知れない。
だが……。
(気をつけなきゃいけないのは、さっきの拳銃だ……)
こいつらが、どんな集団かは分からない。
もしも組関係や何かだとしたら、それが本物だということもあり得るのだ。
(でも、逆にあれが本物だとしたら……。尚更このまま大人しく言うことを聞いてる訳にはいかないっ)
自分が此処にいることで兄たちが本来の動きを封じられて、もしも怪我をしたり命に関わるようなことがあったら、自分は後悔してもしきれない。
「それにしても、あんた綺麗な顔してるなァ。兄貴は双子なんだろ?やっぱり似ていたりするのか?」
一人の男が膝をついて夏樹の顔を覗き込んで来た。
どうやら、ここにいる奴等は素性を調べただけで冬樹の顔までは知らないようだ。
(……そんな直接面識さえない奴に、ふゆちゃんを恨む権利なんかないっ)
こうなったら、一か八かで暴れてやる。
夏樹は俯いたまま口の端に笑みを浮かべると、拳に力を込めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます