第81話
「…何だァ?テメェはッ!」
突然現れたその人物に、男達は少なからず驚いていた。
雅耶は180センチを超える長身だ。
ある意味、見た目で甘く見られがちな冬樹とは違い、決してゴツイ体格な訳では無いが、鍛えられ引き締まった身体を持つ雅耶に上から見下ろされ、男達はそれなりに動揺していた。
「雅耶…?…どうして…」
冬樹も思わぬ人物の登場に驚きを隠せないでいた。
後ろ手に締め上げられ前のめりになりながらも、大きく瞳を揺らして雅耶を見上げている。
雅耶は顔だけ僅かに冬樹を振り返り、
「ごめん、冬樹。話は全部聞かせて貰ったよ」
そう言うと、目の前の上級生の目を直視した。
「もういい加減…この二人に構うのはやめてもらえませんか?」
それは穏やかで丁寧な口調ではあったが、パンチを受け止めて掴んだままの雅耶の手には、その表情とは裏腹に、もの凄く強い力が込められていた。
ゴツイ男が痛みに必死に振り払おうとしても、それは解けない程に。
「テメェ…突然出てきて何言ってやがるっ!…っていうか、離せよっ!」
「約束…してくれませんか?もう二人に手出しはしないって…」
そう穏やかに話す雅耶の目は、男を真っ直ぐに射抜いて来る。
「へっ。誰がお前みたいな一年坊主の言う事なんか聞くかよっ!オメェら生意気なんだよっ」
雅耶の気迫に負けじとタンカを切り、掴まれた手に対抗して自身も力を込めるが、逆にギリギリ…と腕を
すかさず仲間の二人が割って入る。
「テメェッ!コイツらがどうなってもいいのかっ?」
「それ以上やると、この二人に痛い目みて貰うぞっ!」
そう言って、逆に雅耶に脅しを掛けた。
首元を腕で締め上げられた西田は呻き声を上げ、冬樹も尚更強く腕を締め上げられ、顔を歪ませた。
だが、雅耶はそんな脅しには屈しない。
「そちらこそ…この人の骨をへし折ってもいいんなら…」
そう静かに言った瞬間、ゴツイ男は更に力を込められ悲鳴を上げた。
「やめっやめろっ!!お前らっ!!…わかった!!分かったからもう止めてくれッ!!」
結局、上級生の三人組は降参せざるを得なかった。
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