第3話

ゆっくりと声のする方へ足を運ぶ。


扉を開けてその子供部屋から出ると、すぐに左側に階段が下へと続いていた。

母親の声は下の階から聞こえてくる。

静かに一歩一歩踏みしめるように階段を下りて行くと、吹き抜けの明るい玄関ホールの正面に出た。

今度は、右後方から声が聞こえてくるカタチになる。

綺麗に磨かれた板張りの廊下を、声のする方へと足を運ぶ。

そして、奥のリビングに母親の姿を見つけた。


彼女は、何故かソファーの陰やテーブルの下などを覗いたりしている。

淡い空色の涼しげなロングのノースリーブワンピースを身にまとった、細くて華奢な後ろ姿。

白のリボンで後ろに緩く一つにまとめた栗色の柔らかそうな長い髪がふわふわと揺れている。


昔、そんな…まるで少女の様な、若くてきれいな母親がちょっと自慢だった。


どうやら母は自分を探しているつもりらしい。

でも彼女には、ここにいる自分の姿が見えていないらしかった。


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