☆第一章☆

第4話

世界地図の中心から南西に位置する国。


ガーディアナ。


「おーい!

木材運ぶの手伝ってくれーっ」


「もう少し右だ!」



資材を運ぶ押し車の音。釘を打つかなづちの音と、声で呼びかけている。


活気が戻ってきたわね。


それらの音を聴きながら、彼女は目の前にある書面に目を通していた。


あの時の悲劇からもう1年が経った。


目的を達成し、私たちがここに帰ってきた時には、修復作業が始まっており、それから半年。


ようやく元通りになるのですね。


…うぅん、違うわ。


元通りにはならないわね。亡くなってしまった人は還ってこないもの。


目を伏せて、思い浮べる。


…お父様。

…バリオス様。

城下に住んでいた方々。


そして……。


ある人物の顔が浮かんで、それを振り払うように、頭を左右に振った。


彼は…そう決まったわけじゃない。


ふぅと小さくため息をついて、読んでいた書面を伏せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る