第14話

夜空にパァンと音を立てて、大きな花が開く。


ドンドドン、と櫓(やぐら)から聴こえる太鼓の音。身体にまで響いてビリビリする。


「まさか、こんなにスムーズに進むとはな」


種族を越えた結束。多少もめる事もあったが、祭は始まった。


「お、トライハルトも来たか」


「ソウマ…」


浴衣をくずして着たソウマが近づいて来た。すでにどこか寄ってきたようだ。ようじを口にくわえている。


「そういえばヒルダは一緒じゃないのか?」


「いや、出掛ける前に仙女とフィリアス王女が来て、だな…」


『ヒルダをちょっと借りるぞ?』


『な…?!』


『なに。悪いようにはせぬ。安心して先に会場に行くがよい♪』


『あ、あの…』


『さあ、ヒルダさん。参りましょう』


「…という感じでな」


安心しろと言われても、なんだか落ち着かなかった。


「お前のところもか!」


「な!?」


「いやさ、マオたちもゼクティに呼ばれて行っちゃったんだよ」


「なんなんだ?」


「せっかくの祭なのじゃ。

女性に準備はつきものじゃよ?」


「のわっ!?…と、ん?」


「待たせたの」


背後から声をかけられ、驚いて振り返ると浴衣に衣裳を変えた女性陣の姿があった。


そこにはもちろんヒルダもいた。

編み下げとは違う、髪止めでアップにしていて、いつもとは違う彼女に、言葉には出さなかったが、胸が高鳴っていた。

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