罪人の花嫁は砂漠の王子と優しい慈雨に包まれる【完結】

kaya(カヤ)

Prologue

Prologue

 ————どうしてこんなに彼女の事が気になってしまうのだろう。


 

 何も知らなければ、ただ形だけの夫婦として声も掛けず…顔も見ず…会話する事もなく生活していたかも知れないのに。

 しかしそうするには余りにも二人で過ごす時間が長過ぎた。

 

 好奇心や探究心…それよりも…もっと深く言い表す事のできない別の感情が芽生えて、何度もそれを知りたいとザイードの心を突き動かすのだ。


 いつも何かに怯えては萎縮してしまう彼女を怖がらせないように、そっと問う。



 「教えて下さい———ナーディア。

 貴方は本当に故意に水害を起こし、ガシェー国の多くの人々を死に追いやったのですか?

 もしそうでないのなら———」



 まばたきをし、やはり恐れるようにザイードを凝視する、神秘的な紫のアメジスト色をした瞳。

 薄い赤色に染まる頬はあの婚礼の日に見た時と同じ。

 

 特にザイードの前では小さな猫のように縮こまってしまう彼女が、どうしてこんなにも気になって仕方がないのか。

 その答えを誰よりも彼自身が知りたいのだ。

 


 「いいえ…ザイード様。私は——————」



 わずかに開いたサーモンピンクの唇が、ついにあの時の真実について話し始めた。

 一つの物語を紐解くように……………

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