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 翌日から学校には変な噂が流れていた。



 『板橋凪は、妹の杏奈をいじめてる。』

 『杏奈が好きな伊吹先輩を横取りした。』

 『板橋凪は性格が悪い』



 そんな噂が当たり前のように流れて、クラスの友達も、それ以外の生徒達も、皆凪を無視するようになった。



 しかも杏奈は皆の前で、家では決して見せない笑顔を振り撒いていた。

 


 『杏奈ちゃん、可哀想。』

 『お姉ちゃんに負けたら駄目だよ』

 『私達がついてるからね。』

 『何かされたら言ってね。』



 『うん、大丈夫。みんなが優しくしてくれるから。何かあったらすぐに言うね。』



 何もないのに。

 凪が杏奈をいじめたなんて事実はないのに。

 だけど杏奈は昔からそうやって、ありもしない事を周囲に信じ込ませるのが得意だった。



 確かに杏奈は見た目が子役アイドルのように可愛く、それに華奢だった。

 おまけに泣き顔も母性をくすぐるようなタイプだ。



 甘え上手で、よく両親にも欲しい物があると可愛くねだる事が多かった。



 だから…でも。何で。



 彼氏まで欲しがるの?



 1週間後には、すっかり周囲から見放されて孤立した凪と、対照的に学年問わず皆に囲まれている杏奈の姿があった。

 その隣には、なぜか伊吹くんもいた。

 


 『付き合ってるんだって』

 『へえー。やっぱりお似合いだよね。』

 『美男美女。』『凪じゃ似合わないよね。』



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