『みかんちゃんといちごくん』

阿知尚康

第1話

大きな声で絵本を読んでいる五歳のなな。


ななは、生まれた時からパパに絵本を読んで貰っていた影響で、絵本が大好きになったのでした。


「なな! 夕飯だから絵本読むのを止めて早く食べに来なさいよ!」


ママの呼び声が響く。


「ちょっと待って! あと少しで読み終わるから!」


と言ってなかなか来ないなな。


「早くしないと夕飯が冷めるわよ! ママは後片付けもあるんだから!」


と、負けじとママ。


渋々食卓に来るなな。


「ななは、本当に絵本が好きなんだね」


先に食卓にいたパパが、微笑みながら言った。


「好きじゃなくて大好きなの!」


すかさず答えるなな。


「そうか大好きか、それは良かった、ハッハッハ」


ななの頭を撫でながら笑い飛ばすパパ。


「でも、ブロッコリーとニンジンは大嫌い!」


両利きのななは、そう言って右手に持ったスプーンでブロッコリーとニンジンを皿の端に寄せて、左手に持ったフォークで唐揚げを刺して食べた。


「いいよ、嫌いなものを無理に食べなくてもね、その代わり好きなものをたくさん食べなさい」


「うん! パパ大好き!」


パパは、食べ物の好き嫌いを叱るどころか、ななの意思を尊重した。


「ママは、栄養を考えて作ってるのにパパは、そうやっていつもななに甘いんだから」


不貞腐れるママ。


ななは、パパが年をとってからの子供と言う事もあり、とても甘やかされ溺愛されていた。


「ごちそうさまでした!」


夕飯を食べ終えたななは、一目散に自分の部屋に戻り、再び大きな声で絵本の続きを読み始めるのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る