第37話

買い物を終えマンションに帰って来ると安心したのか話す事が出来る様になった



外では一言も話す事はなく意思表示は手を強く握るだけたった



部屋に入るなり紫音はソワソワしてる



携帯に興味があるらしい



「紫音?今まで携帯は使った事がないんだろ?」



「伯父さんは持ってた・・・私はない・・・見てもいい?」



「いいよ」



紫音は携帯を手にすると目を輝かせ



「これ・・・私の?」



「そうだよ。」



「・・・嬉しい・・・あっ・・・これ」



紫音は俺に封筒を渡してきた



中には3万円が入ってる



「全然、足りないけど必ず返します」



紫音は俺にそう言って頭を下げた



「・・・はぁ・・・紫音?これは受け取らない。」



「・・・どうして?」



「今日の買い物はここで生活するのに必要なモノだよね?」



「ぅん」



「ここで一緒に暮らすのは紫音だけの為じゃない。俺が紫音に側に居て欲しいから。俺はね、同情だけで紫音と一緒に居る事を決めた訳じゃない。そんなに出来た人間じゃない。・・・あの時、紫音と初めて会った時、紫音の心が俺には聞こえた気がした。『私を見つけて。側にいて。』・・・って聞こえたんだ。気のせいかもしれないけど。だから俺は今、紫音とここに居る。俺もあの時、紫音と一緒に居たいと思ったから・・・だから、このお金を受け取るとしたら、お揃いで買った茶碗と箸その分だけ俺にくれ。紫音が自分でここに・・・俺の側に居たいと思ってくれるなら・・・」



「・・っグス・・はぃ。ここに・・・渉の側に居たいです。」



涙を堪えて俺を見ながらちゃんと伝え様としてる。俺と同じ気持ちか分からない。でも、俺は自分の気持ちを伝えたい・・・



「紫音・・・好きです。」

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