第61話
怒号と共に数多の重たい剣が木製の国境門に振り下ろされる。鈍く銀に光る剣身が、日差しを受けてきらきらと光る。
頑丈に出来てはいるものの、何千何百もの屈強な男たちの力に耐えるには限界があった。
「もうすぐ穴が開くぞ! 手を緩めるな!」
木片や金具が飛び散り、突破は目前かと思われた。
と、陣営の後方にいる一人の騎士があることに気が付いた。
上空に、いくつもの赤い斑点が見えるのである。
「む? 何だあれは。赤い鳥などこの辺りには生息していないはずだが……」
目を凝らしていると、赤い斑点は徐々に大きくなっていることが分かった。
時間にして数秒後の出来事である。
その正体に気が付いた騎士は血相を変えて叫んだ。
「上空九十度の角度より
悲痛な叫びを聞いた騎士たちにどよめきが広がる。国境門に剣を振り下ろす手を止めて、上空を仰ぎ見る。
「炎流星だと!? まさかそんな」
「うわあっ、本当じゃねえか!」
「いったいどういう訳だ!?」
「知らん! とにかく逃げろ、死ぬぞ!!」
国境門に群がっていた騎士たちは、陣列を崩して散り散りになっていく。
しかし、その上に無慈悲にも炎流星が降り注いでいく。
紅い尾を引いた灼熱の炎は人間などいとも簡単に吹き飛ばしていく。筋骨隆々とした騎士であっても、なすすべもなく宙に身体が舞う。
着弾地点は陥没し、周囲に炎が広がった。逃げ惑う騎士たちの悲鳴は土埃と爆音にかき消され、辺り一帯はあっという間に火の海になった。
王ガイウスは最後方にいたため直撃を免れたが、眼前に広がる光景に言葉を失っていた。
一分も経たないうちに騎士団の大半が壊滅して、国境門の前は火の海になっている。
「な、なにが起こっているのだ……?」
戦の経験は豊富だが、こんな展開は経験したことがなかった。そもそも
ガイウスははっとする。
「大魔法使い……?」
その瞬間、背中に氷を押し付けられたかのように寒気が走る。
ごくり、と喉を鳴らす。
ゆっくりと炎流星が降ってきた方角を見上げると、そこには――――
「お久しぶりです、父上」
底冷えするような声に聞き覚えはあったが、友好的な色は一切感じられない。
漆黒のローブをはためかせて宙に浮かぶその人物は。
「る、ルシファー!!」
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