第11話 思わぬチャンスが訪れる
凛子は最近なぜか…焦っていた…。まるで死期が近い自分を潜在的に感じていて、早く今のうちに何かをしなきゃだめよと、ささやかれてるように、このままじゃあダメだよって、凛子の心の奥の方で
いつも急かされてる感じだった。
就活もナカナカ上手く行かない…。
母親からは相変わらず罵声の日々…。
―私は一体…
心底どうしたいのだろう?―
その答えが出ないまま…悶々と月日が過ぎていた…。
ある朝…凛子が洗濯をしようと、夫のワイシャツのポケットの中に、なにもないか確認をしていたら、プラネタリウムの半券が入っていたのだ。
凛子はテーブルの上にその半券を置いて、何も言わずに洗い物をし始めた。
夫もなんて言っていいのかわからず、慌てて家を出て仕事に行った。
それから数分して夫から電話がかかってきた。
夫は慌てて…しどろもどろになりながら、弁解をしている。
何やら夫が嘘をついて、凛子には内緒で有給を取って、ネットの友達とプラネタリウムを、見に行ったようだ。
仕事から帰ったら詳しく説明をするから、聞いてくれと言われた。
―凛子の中ではっきり糸が
プツンと切れる音がした―
夫の今回の出来事が起きるまで、凛子は自分がどうしたいのか。
今の就活がナカナカ上手く行かない事等、グチャグチャだった。
だけど、不思議な事に夫がしでかしてくれて、凛子の中で物凄い静かな怒りが込み上げてきたことで、自分がどこに向かって行けばいいのか、迷いなく動ける自分に成れてきたのだ。
実は今まで夫に苛立たされて怒りが込み上げたときは、凛子は夫が一番嫌う事をしようと決めていて、過去には夫が嫌いなパーマヘアーにしたこともある。
これまではそのように、今の自分の目の前の苛立ちの感情を、ただ何かでやり過ごす凛子でやって来てた。
だけど…今の凛子はちょうど9年というサイクルの節目に来ている事で、今までの自分のあり方から変えたい意識が、物凄く強かった。
その事をいつも入院中から模索し続けていたのだ。
なかなかそれが何なのか分からなくて…もどかしくて…重苦し日々を送っていたのだった。
だが、今の凛子はその自分から何かは、まだはっきりはわからないが、漠然とした課題に向かって、真っすぐわき目も振らず、突き進む意志の強い凛子に、成り始めようとしているのを感じたのだった。
よし!まずその課題を見つけよう!!
凛子は久し振りに自分自身と真剣に真摯に向き合い始めた。
まず!夫が一番嫌がる事を想像した。
色んな嫌がる事が脳裏に浮かんだが…今までとは同じ類の事はしたくなかった。
そこでもう一つ付け加えることにした。
私にとってプラスに成る事…。
今の私が一番悩んでいる事…。
それは…
就活…。
そうか!仕事だ!!
夫が一番嫌っているのは私が仕事をする事だ!!
そこに私にプラスになる事…。
夫は凛子が仕事をするのは嫌で、一番許せないのは正社員になる事で、凛子はずっと正社員になりたかったのだ。
そうだ!!
『正社員になる事だ!!』
―凛子はやっと
めざす課題を見つけたのだった―
凛子は目標が見つかると、それに向かって猪突猛進できる。そして達成できるまで諦めずに、立ち向かえる根性を持っている。
正社員に成る為には、今の凛子に必要な事は…まずは書店に行って、正社員事情をしっかり情報収集して、的を絞って行こう。
そんな凛子とは裏腹に夫は、家に帰って凛子になんて弁解をしようか…考えていた。
夫が帰って来てなにやら…パソコンを開いて長々と言い訳を、言っている凛子はその話の半分も耳に入っていなかった…。
―そんなことはもうどうでもいいわ―
と凛子は思っていた。
目標が見つかった凛子はその日から忙しかった。一日の時間をとにかく有効に円滑に、使いたくてたまらなかった。
相変わらず母親に嫌味を言われても好きに言っておけば…と思えた。
凛子には母親に嫌味を言われて落ち込んだり、イラつくエネルギーを使っている時間はないのだ。
履歴書もかなり工夫して凛子の良さが、よりアピールできるように
考えて書いた。
何社も面接を受けてめい一杯の時間を、惜しみなく有効に使い続けた。
その甲斐があってやっとついに就職先が決まった。
凛子はあの日以来何も言わず、普通に接しているので夫は安心しているのだろうなぁと思っていた。
そういえば私は今までもずっと、そうやって来てた波風をあえて立てずに、深く追及もせずに何事もなかったように、やり過ごして行けるそんな利口な妻になる事を、頑張って来たのだった。
あんまり度を越えたら、小さな仕返しとして夫が嫌う事を、したりはあったがほんの些細ないたずら程度だった。
だけど今回の凛子は今までとは一味も二味も違って、かなり本気のお返しをしようとしていた。
凛子は仕事から帰って来た夫に何気に尋ねてみた。
『あなた、あれから1ヶ月が経ったけどどんな日々を過ごしてた?』
夫はいきなりの凛子の質問に驚いてた。
『いきなりなんだ! 何が言いたいんだ!』
夫はパニクルとすぐ怒鳴る癖がある。そうやって自分を防御しているのだ。
凛子はもうそんな大声で怒鳴る夫を怖いともなんとも思わない所まで、精神が強くたくましくなっていた。
『いえ、何事もなかったように過ごされてると、感じたものですから、尋ねてみたんです。』
凛子の思惑通り、夫は凛子に敬語の嫌味を言われて、苛立ちが込み上げて来ているようだ
『一体、お前は何が言いたいんだ!!』
―凛子は今だと思った―
凛子は冷静に淡々と…。
『明日から正社員で働きます。』と伝えた。
夫は鳩が豆鉄砲とくらったかのように、唖然として呆然と立ち尽くしていたものの数十秒経った頃…。
『そんな勝手な事いつ決めたんだ!!わしは認めないぞ!!』と大声で少し震えた声で叫んでいた。
凛子はその後何も言わずに夫のそばから離れ去った。
夫もそれ以上、凛子を追って、何かを言い返す気力もない感じだった。
朝も無言で夫は会社に出掛けて行った。
凛子はよぉーし!!今日から正社員がんばるぞぉ!!ってとっても清み切った青空を見上げながらガッツポーズしたのだった。
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