第7話 別離
宇宙にメールを送っても、既読もされない…。
どうしたんだろ?凛子は心配になって、宇宙の仕事場に行ってみた。
どこを探しても
宇宙の姿が見えない…。
宇宙の部署の後輩の子を
見かけたのでたずねてみた…。
すると…。どうやら宇宙達の現場の仕事が今月で終わるみたいで、宇宙は違う現場に、今週から行っているみたいなのだ。
結局、宇宙からは連絡は来なかった。凛子は心配になったので、宇宙の現場に行ってみたら、宇宙が作業をしていた。
思わず『宇宙〜。』と
職場なのに叫んでしまった。
宇宙はなんだか今までと違って、目の感じがどんよりしていた。
凛子:
『だいじょうぶ?
どうしたの?
具合が悪いのかな?』
凛子は心配になって
質問攻めをしてしまった。
宇宙は心ここにあらずみたいな状態で、黙々と作業をしている。明らかにいつもの宇宙と違うのはわかる。
凛子は心配で心配で、
でも…どう?声をかけたらいいのか…分からず…一生懸命に考えた。
凛子:
『ちゃんと食べて眠れている?』と聞いてみると…。
宇宙:
『食欲無い…眠れてない…』と力無い声でやっと答えてくれた。
そしてさらに宇宙が
『いつもなんだ…
こうなるのは…』と言った。
ん?いつも?どういうこと?凛子は、あまりの言葉数の少ない宇宙の返答に、困惑しまくってしまった。
宇宙:
『僕…今月でここの仕事を辞めるんだ…。』
凛子:
『えっ?そうなの?なんで?』
急な話に凛子は混乱してしまっている。
現場が変わるのは聞いては居たが、ここを辞めるのは、正直に驚いた。
宇宙:
『仕事を辞める前って、いつも僕は…こうなるの…実は、鬱病持ってて…。』
鬱病?初めて知った。確かに精神が繊細そうだとは思ってはいたが、鬱病とは知らなかった。
凛子はなんて言葉を、かけてあげたらいいのか…戸惑っていた…。
すると…
宇宙がポツリポツリと話し始めてくれた。
宇宙:
『僕…実は…前からしてみたい仕事があるんだ…。』
凛子:
『えっ?そうなの?どんな仕事?』
宇宙:
『うんとね…介護のお仕事』
凛子:
『それ凄くいいと思う。なんだ…ちゃんと宇宙って自分に
向いている仕事…わかってるんだね、凄いじゃん。』
凛子はホッとした。宇宙が前向きに、次への就活を考えていて、安心したのだ。
夜…
宇宙と久しぶりにメッセージのやり取りができて嬉しくて、宇宙を元気付けているつもりが、つい凛子の性格上の
お節介な所が、裏目に出てしまい、宇宙から返事が
来なくなってしまった。
次の朝も宇宙からメッセージは来ていなかった。
職場の休憩時間に宇宙に勇気を出してメッセージしてみた。
あまりにもずっと未読なので
気になって調べたらlineで『ブロック』されている事が
分かった。
凛子はlineで『ブロック』ってものをされたことが、一度もなかったので、自分でも想像つかないぐらいの衝撃を感じてしまった。
気が付いたら、ここが職場であることすら、忘れていたみた現場でいきなり、わんわん子供のように泣きわめきだした。
もう涙があふれ返して、止まらなくなってしまい、自分でもどうしたらいいのか?わからないぐらい深い悲しみの世界に落ちて行ってしまった。
どのぐらい泣いてただろう。気が付いたら、給湯室に移動させられていた。
普段は穏やかで、落ち着いて
冷静な凛子のイメージとは
真逆な面の、感情爆発しまくりの、精神のコントロール制御が、不可能な状態になっていた。
周りでは…『何か仕事であったんだろうかね。。』なんて噂をしている。
ようやく、周りの声がかすかに聞こえ始めた凛子は、自分がここまでに、しでかしてしまった失態に気付き始めて、
物凄く恥ずかしくなってきた。
佐藤先輩も心配してくれている。
自分でもこんなに、精神が破壊されたみたいになるとは、思ってもみなかった。
凛子は周りの人たちに、『ご心配をおかけして、すみませんでした。』と丁寧に謝りながら仕事場に歩いて行った。
ふといきなり、宇宙に怒りが湧き起こって来て、更衣室に行って以前、宇宙から借りていたカセットテープを持って、宇宙のいる作業場に向かった。
そして宇宙を見つけたので、ありたっけの怒りを、宇宙にカセットテープと一緒に投げつけてぶつけた。
凛子:
『もう私には必要ないから
返すわ!!』
そう捨て台詞を言って凛子は宇宙の作業場から足早に走り去ったのだった。
それから数週間経った…。
周りの噂で明日、宇宙が退職すると聞いた。凛子は最後は
ちゃんと話をして終わらないと、後悔すると思い、勇気を出して宇宙にショートメールを送った。
凛子:
『明日で最後と聞きました。
明日の朝、仕事に行く前に
少し会えませんか?』
すると…
宇宙から返事が来て
宇宙:
『うん。僕も会いたいです。
朝の7時に〇公園の駐車場で待っています。』
凛子は宇宙に会って、最後に素直な気持ちを伝えようと思った。
翌朝、凛子は久しぶりに、宇宙と会い伝えたい気持ちを話した。
宇宙は凛子に『短い間だったけど、色々ありがとうね。』
と言ってくれわだかまりが静められた。
凛子に宇宙がポケットから『僕がずっと使っていた
ものさしをあげるね』と
最後の贈り物としてくれた。
その後、職場に二人は別々に向かった。
凛子は運転をしながら宇宙とのここまでの思い出の数々を
思い返していた。
そして宇宙は周りの人に見送られながら職場を去って
行ったのだった。
凛子は、宇宙が退職したら、もっと寂しい日々を、送るかと思っていたのだが、仕事も忙しい事も良かったのか、思ったほどの喪失感はなかった。
だけどきれいな青空を見るたんび、宇宙は元気にしているのかな?と一日に何回も、宇宙に心の中で、問いかけることはあった。
もう宇宙と会う事もないんだろうなぁ…。ってひとり瞑想をしていると…。
隣で福田君が休憩室で誰かと電話で話をしている。
『あーはい。ちょっと待ってくださいね。』
福田君がいきなり
『凛子さん、石田さんが電話をかわって欲しいって言ってます。』
凛子:
えっ?石田さん?
これ現実なの?って思いながら凛子は電話に出た。
凛子:
『もしもし…山川です。石田さんお久しぶりです。お元気にされていましたか?』と
一般的な挨拶言葉をかけた。
宇宙は
そんな凛子の敬語を聞いて懐かしく思った。
宇宙:
『凛ちゃん、お久しぶりです。お忙しい所すみません。はい、介護の資格取得に向けて頑張っています。』
凛子は心の中では、わぁ~宇宙からだぁ~と、嬉しかったのだが、さすがに隣には会社の人もいるので、業務言葉で返答をしたのだった。
凛子:
『そうなんですね。頑張って、介護の資格を取得されて
下さいね。』と言うと休憩終わりのチャイムが鳴ったので、
『石田さん、休憩が終わったので失礼します。』
と言って凛子は電話を切った。
宇宙は何日も前から、凛ちゃんと話したくて、たまらなかったのだ。
なにか方法はないものか?
ずっと考えていたのだ。
そうだ!
後輩の福田君が居たと思い出したので、福田君にかけて
凛ちゃんと話すきっかけをもらって、自分の事を思い出してもらおうと思ったのだ。
凛ちゃんはこの電話をどう思っただろうか?
この時の宇宙には話してない間に、大変な状況が凛子の身に起きている事すら知らないのだった。
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