新たな真実

第80話

「実はなー」




「俺のかぁちゃん病気で入院しているんだ」




「マジですか!じぁ太郎さんこんな事している場合じゃないでしょ!」




「それがな、かぁちゃんが一番応援してくれているんだ」




「いい母さんですね」




「俺が小さい頃に、オヤジと離婚したらしく、かぁちゃん女でひとつで俺と弟を育てあげたんだ」




「かぁちゃんは俺達兄弟には、何も不自由させたく無いと言って、昼も夜も寝る間を惜しんで働いていたんだ」




「そんな昔の無理が祟って、今じゃ入院生活」




「だから俺、早くかぁちゃんに恩返ししたくて…」




「就職活動の時も、俺が音楽をやりたいってワガママ言ったら、反対するどころか、好きな事やりなさいと賛成してくれた…」




「嬉しかった…」




「だから俺、東京で夢を追ってちゃんと暮らしている証拠として、入院費を含め毎月15万円も仕送りしているんだ」




「かぁちゃんは、俺が東京でそこそこの生活をしていると思い込んでいるよ」



「実際はどん底の生活だけどな」




「でも、俺はそれでいいんだ」




「かぁちゃんに長生きしてもらえれば…」




肉体労働で、毎月20万円稼いでいるのに貧乏な理由が、ここで初めてわかった。




この男、なんて親孝行なのだろう。




今更だけど、その20万円を盗んだ泥棒よ!バチが当たるぞ!




そんな太郎の昔話しを聞きながら、泣きじゃくる次郎であった。

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