第33話 魔国四天王グダス
「おかしいな~。【天使の羽根】は確かにここを示してるんだがな~」
ブラックゴーレムのような体躯の男はそう言って頭を掻く。天使の羽根? 確かにこの人はそう言ったよな。
「おま……あなた様はもしや。魔国、サダラーンの四天王グダス様では?」
「おっ? なんだなんだ? 俺様ってそんなに有名なのか?」
グラフが焦りながらも名前を呼ぶと男は顔を赤くさせて照れている。魔国ってことは魔族の人なのか。そんなに悪い人じゃないのかな。
そう思っていると不意に殺気が向けられる。重苦しい暑さのある殺気、僕は平気だけどグラフが汗を流し始める。
「俺様を知ってるなら話が早い。天使がいるはずだ。すぐに出せ。なぁ~に、話をするだけだ。ついでに俺様と強さ比べをするがな。それで死んじまったら話はしないですぬわけだけどな~」
グダスの目的はフィールちゃんか。これは見過ごせないな。僕はウルドとプラナを召喚する。
「お? お前なかなかの召喚士だな。ちょいと腕慣らしと行くか」
ウルドとプラナをグラフが召喚したと思ってるんだな。
「我が主の命によりお前を倒す」
「私もお前を倒す」
「いいねいいね~。強そうな魔物が相手。肩慣らしにはいい相手だ!」
ウルドとプラナの声にグダスが指を鳴らして答える。顔がくっつくほど近づく三人。
一瞬の静寂の後、鋭く重い音があたりに響く。プラナの重い拳がグダスに当たった。
「お~お~、なかなか重い攻撃だ。もう少し体躯をあげるか」
音と共に後ずさったグダスが声と共に体を大きくさせていく。倍以上の大きさになりプラナに掌を向ける。
「俺は強い! 四天王の中で最強。俺の上には魔王様だけだ」
「ううう。困った勝てない」
掌が降りてきてプラナを押しつぶしていく。グダスの声に勝てないプラナは悔しそうに歯ぎしりを鳴らす。
「力で勝てないのならよければいい。何をまともに相手にしてるプラナ!」
グダスの背後にまわるウルド。声と共に鋭く爪を突き立てる。剣と剣がぶつかるような鉄の音を鳴らし、火花を散らす。
「良い爪だ。しかし、俺の体を傷つけるにはいたらない!」
グダスはハエを払うように手を振り、ウルドを遠ざける。奴の言っているようにウルドの爪はグダスに傷を負わせるには至らなかった。
「もういいだろ召喚士。こいつらじゃ俺は倒せねえ。本気でやろうぜ。それが怖いなら天使を出しな。いるんだろ? 天使は」
プラナを地面に埋め終わると声をあげるグダス。
グラフへと告げられる言葉に僕は頷いて答える。
「僕が召喚士だよ。グダスさん」
「あ? 赤ん坊がしゃべってるのか?」
僕がしゃべって見せると興味津々に見つめてくるグダス。
「天使に話があるっていう話だけど、どういうことなのかな?」
僕はそう言うとグダスは首をかしげる。
「ん~、なんだったか。あ~、そうだそうだ。【天界】への道を開かせるなって話だ。それさえしなければ命は保証するってな」
「天界!」
魔界がダメなら天界、そう思っていた矢先にこんな情報が舞い込んでくるなんて。
僕はついてる。
「天使が天界への道を開くってこと?」
「あ、ああ。おかしな赤ん坊だな。俺を恐れてねえ。さすがはあの従魔を扱う赤ん坊ってところか」
顔を近づけて話をするとグダスは嬉しそうに微笑んでくる。だけど、すぐに表情をゆがめる。
「忠告を聞かなかったらお前たちを殺す。天界への道は絶対に開けるな。魔王、サターンの命令だ。わかったか?」
グダスが睨みつけて言ってくる。僕はその声に首を横に振ってこたえる。
「それは無理だよ。僕は帰るんだ。その為には天界に行かないといけない」
「そうか、ならば死ね」
僕の答えに静かに声をあげるグダス。掌を向けてきて押しつぶしてくる。単純な力比べ。僕を侮ってる。
「!?」
「熱い体だね。凍らせてあげる」
氷を纏って押し返す。驚いた様子のグダス。話をするには圧倒的な力を見せつける必要がありそうだ。
僕の手のひらから氷の魔法を強める。黒かった体が氷に変わっていく。
「俺の体を凍らせるほどの魔力とは恐れ入った。赤ん坊となめていてすまなかった。これからは本気で相手してやる!」
手を離し後方に大きく跳躍するグダス。声をあげると黒い体が剝がれていき、赤い体が姿を見せる。
「俺は特異体質でな。マグマでできてるんだ。マグマじゃ友達とも遊べねぇだろ? 戦いになっても一瞬で終わっちまう。すぐに終わっちまったらつまらねぇ。だから、黒鉄鉱を溶かして体に浴びて力を抑えた。これからが俺の本気ってわけだ」
グダスはそう言うとウルドを殴りつける。かなり離れていたウルド、反射速度もかなりいいウルドが簡単に殴られて意識を失ってる。
「アキラ様! ここは私が!」
「お? 木を生やすか? だが、木はダメだ。俺には勝てねえ」
グラフは声をあげてドーム状に木を生やす。
でも、彼の生やした木が一瞬で燃やされる。何の抵抗もなく木に穴が開いていく。奴の体はかなり熱いみたいだ。
「やめて!」
木を燃やし尽くすとフィールちゃんの声が上がる。振り向くと家からエミとレッグスと共に心配そうに見つめる彼女がいた。
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