第18話 天使と悪魔?
「お~い、プラナこっちも手伝ってくれ」
「わかった」
村に帰ってきてパーティーをした次の日。村の畑を耕す仕事をライリー達とやり始めた。村の人達にもプラナとウルドは知られてしまったけど、僕じゃなくてレッグスの従魔ということになってる。
プラナとウルドは嫌だと言っていたんだけど、僕のために納得してくれてる。
「二人がいると畑仕事もすぐ終わるぜ。ありがとな」
「……お前たちのためではない。マスターのためだ」
「ははは、わかってるよ」
ライリーの声に答えるウルド。全く素直じゃないな。お礼を言われて恥ずかしそうに否定してるよ。ツンデレっていうんだよね、ああいうのを。
「あと五つくらいの畑を作るんだよな?」
「ああ、同じ畑で同じものを作っていると大地のマナが減ってしまうらしい。昔、異世界から来たという青年が畑に詳しくて広めたんだ」
ウィドの疑問にレッグスが答える。
異世界の青年……僕以外にも来てる人がいるんだな。もしかしたらその人が帰る方法を知ってるかも?
「ああ、異世界の青年、【クルト】の話か。俺もばあちゃんから聞いた。でもよ、異世界なんて本当にあるのか?」
「ん~、クルトがいなくなって100年程が経っているらしいからな。異世界の話もそこで途切れてる」
ライリーも知ってるみたいで話に加わる。レッグスが考えながら答える。
100年っていうのが異世界の住人が来る周期みたいになってるのかな? それで僕は次の異世界人? そうなると、帰り方は聞けないのか。100年じゃ生きていても覚えていないかもしれないもんな。
「はいはい、話はおしまい。手を動かしな~。特にライリー! 従魔に負けるんじゃないよ~」
「エンリャばあちゃん。人使いが荒い!」
「ファッファッファ! あんたは従魔使いが荒いんだよ! 楽させてやりな!」
エンリャおばあちゃんが大きな声でライリーに声をかける。仲のいい二人は言い合いながらも畑を広げていく。エンリャさんは元気だな~。
村の人達と一緒に畑を広げるとすぐに種まきが始まる。ジャガイモと小麦とニンジンの3種類を植えていくみたい。
「終わった終わった~」
種まきまでを終わらせるのに1日かかった。広大な畑をすべて機械なしで耕すのはプラナとウルドが居ても大変。
ライリーが声をあげてその場で仰向けに倒れる。土まみれの手足、大変だったんだろうな。僕は手伝えなかったから申し訳ないな~。早く大人になりたい。
「それじゃ警備に行ってくる」
「行ってらっしゃい」
畑を耕し終わって一週間程が経った。畑仕事を終えたらいつも通りの警備の仕事に戻るレッグス。行ってらっしゃいのキスをして外に出ていく。
僕は本を読んでお勉強だ。
「バブバブ……」
黒い空間、魔界。それを僕は天国と地獄と思った。それがあり得るなら【天界】があるはず。ということは【天使と悪魔】もいるはず。
悪魔は魔界に住んでいるかもしれなくて、魔界で自由に行動できるかもしれない。あくまでも僕の憶測でしかないけど。
とにかく、プラナ達を強化してみるしかない。何もわからないから全部手探りでやっていくしかないんだよな~。
「バブバブ……アブ!?」
本を読み進めていると従魔についての記述を発見する。その中には僕の考えていた話が書かれてる。天使と悪魔についてだ。
『従魔を従えるには魔力が必要だ。天使はINTの魔力。悪魔にはMNDの魔力。似て非なる二つの魔力は魔物の種族を表しているということだ』
INTが天使? MNDが悪魔? じゃあ、従魔がどちらのステータスを使っているのか分かれば天使か悪魔か分かるってこと?
「バブ!」
「「お呼びですかマスター?」」
家の外に待機させておいたプラナとウルドを呼ぶ。二人は窓から家の中を覗いて答えてくれる。二人は大きいから家の中には入れないんだよな~。
「私はINTを使います」
「我はMNDです」
心の中で質問すると二人は答えてくれる。ということはプラナが天使でウルドが悪魔ってことか。……ということは二人を強化していけば天使と悪魔になるのかな?
「ただいま~」
プラナとウルドと顔を見合っているとレッグスが帰ってくる。さっき出かけたばかりなのに、どうしたんだろう?
「お帰りなさい。どうしたの?」
「エミ、お客さんだ」
エミも可笑しいと感じたみたいで声をあげる。するとレッグスの後ろにレグルス様が立っていた。
「綺麗な嫁さんだなレッグス殿」
「はい。エミです。アキラは知ってますよね。エミ、この方はレグルス様だ。領主様だよ」
家に入って微笑むレグルス様。自己紹介をしてくれるレッグス。
紹介が終わると席に座ってお茶をすする。
「それでどうしてこの村に?」
レッグスも何でレグルス様が来たのか分からないみたいで、質問する。するとお茶をすするのをやめて真剣な表情になる。
「オーランスの話はしただろう? それは間違いだったようでな」
「ゴーレムの魔石の話ですか?」
「ああ」
レグルス様はそう言ってお茶を見つめる。振動で揺れる水の揺れを見つめているみたいだ。
「それじゃあの軍隊は?」
「ふむ、助けに入ろうとしてくれたらしい……」
レッグスの疑問に答えるレグルス様。二人の考えていることは一緒、僕も可笑しいと感じる。
「言いたいことは分かる。しかし、オーランスの王から手紙が届いたのだ」
「王から直接?」
王様から直接手紙が届くなんて凄いな~。それじゃ本当にゴーレムの群れは偶々だったのかな?
「見事ブラックゴーレムを倒した戦士を、パーティーに招待したいと言ってきてな。断ることもできるのだが、オーランスの考えを知れる好機と思ってな」
「……なるほど。それで」
そういうことか。レッグスにパーティーに行ってオーランスの国で情報収集をしてほしいってことか。
「なんでレッグスが! もう危険なことは!」
「エミ……」
声を荒らげるエミ。なだめるために抱きしめるレッグス。エミは嫌みたいだな。僕は召喚の話を調べられそうだから行きたいんだけど。
「エミさん。本当にすまない。だが、これしか手が無くてな」
頭を下げて謝るレグルス様。領主様直々にお願いに来るなんて、レッグスは凄いな。まあ、プラナとウルドのおかげでブラックゴーレムを倒せたんだけどね。
「行きますよレグルス様」
「レッグス!」
エミの反対も気にしないレッグス。彼はエレービア王国のことが好きなんだろうな。自分を犠牲にしてでも成し遂げたいんだろう。
「それなら私も行く!」
「え、エミ……。危険だ」
「何よ! あなただって危険じゃない! 私だって元冒険者なのよ! 自分の身は自分で守れるわ!」
エミはそう言って旅の支度をはじめる。止めようとするレッグスだけど、彼女は頑なで支度の手を止めない。最後までレッグスの言葉を聞かなかったエミ。旅の支度が済んで僕を抱き上げる。
「行きましょうレグルス様」
「あ、ああ……頼もしい嫁だな」
「は、はい……」
エミの迫力にレグルス様もタジタジ。ライリー達に村を任せて再度レグルスエイドに戻る僕らだった。
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