第3話 今世の世界は

「バブバブ」


「あれからずっと読んでるのか? 俺の子供とは思えないな」


「ふふ、レッグスは実戦ばかりやっていたものね」


 本を与えてもらってから三日程が経った。本を読む僕の姿を見てレッグスがあきれて声をあげてる。二人は思い出に花を咲かせてイチャイチャ。

 仲のいい夫婦だな~。羨ましい。

 本を読みながら魔法を習得した。両親には内緒で訓練するのは大変だった。なぜ内緒にしたかというと、なんと僕は全ての属性の魔法を使えるみたいだ。まずは両親の得意な属性の土、水、火をやったら出来た。他の属性である氷、雷、風、闇、光を試しにやってみたら出来てしまった。自分のことながら末恐ろしい赤ん坊だ。


「あの様子なら言葉を話せるようになったらステータスを見られるかもな。楽しみだ」


「そうね。魔法が使えるようになるとみれるものね」


 レッグスの楽しそうな声にエミが答える。

 二人が言っているのは僕もわかってる。ステータスを見ることも魔法の一部。【ステータスオープン】は魔法に分類されているみたい。実は既に習得した。

 僕のステータスはこんな感じだった。



ーーーーーーーーー


ステータス


 アキラ


 レベル1


 HP 250

 MP 440

 

 STR 50

 DEF 50

 DEX 50

 AGI 30

 INT 80

 MND 80


ーーーーーーーーーー


 他の人のステータスを見たことがないから強いのかわからないけど、ゲームなんかのステータスで考えると強いと思う。なんて言っても1レベルだからね。

 でも、このステータスのおかげでハイハイができたのかもな。普通は生まれたばかりでハイハイなんてできないだろうし。


「戦士タイプのステータスだったらいいんだけどな~」


「ふふ、この様子だと魔法使いでしょうね。INTとMNDが20で他が10以下とか?」


 レッグスの声にエミが嬉しそうに僕の頬をつついてくる。

 すみません、すべてそれ以上です。

 普通はそのくらいのステータスってことだよな。ってことは前世のステータスを受け継いでる? 体を動かしていないからそんなに強くないけど、数年の経験がステータスに反映されてるんだろう。

 前の人生は無駄じゃなかったってことだよね。よかった。お母さんの努力は無駄じゃなかったんだ。


「そんなに高かったら期待しちまうな。俺なんか全部のステータスが5くらいだったからな」


「ふふ、私も同じようなものよ。普通はそう」


 ……どうやら、僕のステータスはやっぱりおかしいみたいだ。


 それから僕は更に本を読み進めた。文字が読めたのが大きく僕を助けてくれた。これも異世界転生の恩恵だろうか。


 本を読んでいてわかったことがある。魔法には属性とは違う、別の魔法が存在すること。

 その中で興味がわいたものがある。それが召喚魔法だ。

 別の世界から魔物を召喚する魔法……、本には人を召喚する魔法も存在してる。異世界召喚というやつだ。

 

「バブ……」


 本棚の前で本を読み進める。

 魔物を送還する魔法もあり、それを利用すれば僕は元の世界に帰れる。……二人には悪いけれど、僕はお母さんに会いたい。別れくらい言いたいんだ。ありがとうってさ……。


 召喚魔法には魔石が使われるらしい。魔石は魔物を倒した時に死体の代わりに残るもの。魔物の種のようなものだな。

 この世界の魔物は雨のように魔石が空から降ってきて、その魔石が養分である周囲のマナを吸い込んで魔物に変わる。面白いけれど、恐ろしい世界だ。


 町は城壁で囲まれているけれど、雨を防ぐことはできない。なので町の中にも魔石があることがある。

 それをすぐに見つけることが出来ればいいんだけど、一日も経てば魔物に変化してしまう。

 これの怖いところは魔物の強さ、レベルだ。空から降ってくる魔石は完全にバラバラ。ゲームを始めて町を出たら、ラスボスがいるくらいの事もあったらしい。怖い世界だな。


 召喚魔法に用いられる魔石は強ければ強い程良い魔物が召喚できる……。僕はそんな恐ろしい魔物を倒さないといけないのか。先が思いやられる。


「帰ったぞ~、エミ~」


「お帰りなさいレッグス」


 戦士で兵士をしているレッグスが帰ってくる。手には革袋を持っていた。お土産かな?


「それはどうしたのレッグス?」


「ああ、ゴーレムが出てきてな。一人で仕留めたらボーナスで報酬が出たんだ。銀貨50枚だぞ」


 エミの疑問に答えるレッグス。ゴーレム! 僕も見てみたい。そんなものもいるんだな~。

 言葉が一緒なのは翻訳されてるからなのかな? 僕がわかりやすいように。ほんとに助かる。


「最近強い魔物が増えてきたな。周期が変わったか」


 レッグスがそう言って革袋を机の上に置く。銀貨が革袋から零れ落ちて床に落ちる。

 僕はすかさず近づいて手に取る。一円玉よりも小さなコインだ。でも、純銀なのかな。重さを感じる。


「ありがとうアキラ」


「バブ! ……」


 拾ってくれたと思ったエミが銀貨を奪っていく。もっと見たかったのに。

 銅貨も見たことあるけど、それも一円玉よりも小さなコインだ。銅貨は大きな銅貨、大銅貨っていうコインもあって、それが百円くらいのコインだった。多分銀貨も一緒だろう。ということは金貨もあるわけで、同じように大金貨もあると思われる。


「今日はごちそうにしましょうね」


 銀貨に気をよくしたエミが声をあげて台所に立つ。火を作り出してフライパンを熱していく。水を注ぎ、バターと溶かし、小麦粉を練った塊を切り入れていく。

 見たことがある、刀削麺とかいうやつに似てる。お肉も塊で焼いて、中が生のローストビーフだ。残念ながら僕は食べられませんでした。

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