『妬みの痛み』
阿知尚康
第一章
第1話
四月二日、午前四時四十二分ーーーー。
元気な女の子が産声を上げた。
名前は愛子。
愛情に恵まれる子になって欲しいと、両親が願いを込めて名付けた。
長期に渡る妊活の末、やっと授かった子宝だった。
両親が共働きの為、産まれてすぐに保育園に預けられる事になるが、仕事が休みの時は公園やハイキングに連れて行って貰ったり、誕生日や記念日の時は祝って貰ったりして溺愛された。
裕福とは言えないが、それなりに幸せな家庭だった。
しかし、愛子が三歳の頃に両親は離婚をした。
原因は父親の浮気…………。
父親は、保育園の送り迎えの時に知り合ったシングルマザーと不倫をしていたのだった。
そして、母親と暮らす事を余儀なくされたがーーーー。
五歳の頃、無理が祟って持病が悪化し入退院を繰り返した後、母親は他界した…………。
そして、母方の祖母に引き取られたがーーーー。
七歳の頃、通院していた病院の帰り道に交通事故に遭い、祖母は帰らぬ人に…………。
そして、浮気相手と再婚をしていた実父に引き取られる事になったがーーーー。
ここで愛子は、酷い虐待とイジメを幾度となく受ける事になった。
実父の理不尽な暴力から始まり、再婚相手の継母による罵倒と意地悪。
更に、一つ年上の連れ子からの執拗なまでの嫌がらせとイビリ。
ノイローゼを通り越し、精神崩壊が始まった…………。
自己嫌悪と現実逃避をし過ぎて、自分が自分で無くなり、ふわふわとした感覚に苛まれ、身体の感覚も心の感覚も全ての感覚が失われて行くーーーー。
自傷行為を繰り返し、夜も深く眠る事が出来きず、無意識に身体を丸め歯を食い縛り、手も掌に爪痕が残る位に強く握り締める状態が朝まで続いた。
この世から消えたい…………。
毎日、そう思うようになっていた。
そんな地獄の様な日々を堪え凌ぎ、ようやく義務教育を終えた。
ある日、商店街を歩いていたら、占い師に呼び止められて手相を見て貰う事になった。
占い師曰く、長年手相占いをしてきたが、こんな手相を見た事がないと言われた。
手相の基本四線と呼ばれる生命線、知能線、感情線、運命線が無く、無数のシワだけで掌が埋め尽くされているらしい。
サンプルにしたいので、写真を撮らせて欲しいと言われたが、無性に腹が立ち手を振り払って逃げた。
途中、本屋さんに立ち寄った時、一冊の本と運命の出逢いを果たした。
オカルト雑誌であった。
普段は、超常現象と怪奇現象、未確認飛行物体を主に扱う雑誌なのだが、今回の特集は“呪い”をテーマにしたもので、愛子にとって非常に興味深い内容が掲載されていた。
それはーーーー。
“あなたにも使える呪いの魔術の方法”だった!!!
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