第5話 蓮汰の生活

「蓮汰・・・付き合ってほしいんだけど・・・」

「うん・・・いいけど・・・」


学校帰りのファストフード店。

中学から仲のいい里奈に急に告られて、焦ったけど、でも、嫌いじゃないし、かわいいし、まあ、いっかって思って付き合う事にした。


「ホントに?やった・・・」

「うん。いいよ。あ、やべ、今何時?」


俺は慌ててスマホを取り出す。


「やべっ!6時だ!ごめん、もう帰るわ!」

「え?まだ6時だよ?」

「悪い!」


里奈には悪いけど、俺は急いで店を出た。

自転車をこいで20分くらい。

1階が美容院の賃貸マンションの5階が俺の家。

はぁ、はぁ、はぁ。

エレベーターで息を整える。


「ただいま。」


玄関のドアを開ける。


「お兄ちゃん、おかえり〜!」


年長の妹の祐奈が、駆け寄ってくる。


「ただいま、祐奈。今からご飯にするからな。」


手を洗い、制服からTシャツに着替える。


「オギャーンンンギャー!ンンンギャー!」


あぁ・・・起きたか・・・

和室の引戸がゆっくり開く。


「蓮汰、遅い。お腹すいたから、早くご飯作って。」


赤ん坊を抱いた母が、ボサボサの頭で出てきた。体調が悪そうだ。


「ごめん。今から作るから。」

「ンギャー!ンギャー!」


母は哺乳瓶に粉ミルクを入れ、電気ポットからお湯を入れる。

人肌に冷ますと、ハアーとため息をつきながら、ソファに座り、赤ん坊にミルクを飲ませる。

赤ん坊は、俺の3人目の妹。理吏りり

生まれてまだ2ケ月。

俺の母の3人目の旦那との子供だ。

あくまで、母の旦那なだけ。俺の父親じゃない。

俺の父さんは、母の2人目の旦那。

2年前に別れたけど、俺達とは仲良くて、蘭世は、しょっちゅう父さんの家に行ったり、学校まで送ってもらったりしてる。

俺らにとっては、優しくて、最高の父さんだ。

そんな父さんと、別れたとはいえ、たった2年で子供作って再婚って・・・。

しかも、俺はその男と数回しか会った事がない。それなのに、再婚したとたん、この家に当たり前のように帰ってい座りやがって。

この家は、父さんとの思い出がたくさんある家なのに・・・・


「お兄ちゃん、今日のご飯なぁにぃ?」


妹の祐奈が隣で話かける。


「今日はな、オムライス。」

「やったぁ!ゆぅちゃん、オムライスだぁいすきぃ!」


かわいいな、祐奈は、父さんの子だから。


「あたしはいらないから、できたら祐奈に食べさせといてね。あと、その後は理吏お風呂に入れるから手伝って。」

「わかった。母さん、大丈夫?」

「うん・・・」


母は理吏を生んでから寝込む事が多くなった。

そんな時は、俺が晩御飯を作って、蘭世が毎朝弁当を作る。

そして、2人で祐奈の面倒を見る。

理吏のお風呂の手伝いも俺らだ。

くそっ!!

新しい旦那がやればいいじゃねえか!!


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