第2話麗華の日常

「麗華〜もう起きなさいよ〜」


う〜ん。

母が毎朝、私を起こす。

昨夜は1時まで友達とラインしてたから・・・眠たい。


「ご飯食べなさいよ〜」

「・・・いらない。」

「いらないって・・・少しでも食べていかないと。」

「いらないって言ったらいらない!」


母は毎朝シャワーを浴びる。

その髪を乾かしながら、朝から私に説教。

はぁ。うざい。

寝起きで体がだるいし、頭も少し痛い。

こんな状態で、ご飯なんか食べれるか。

バカじゃないの?


「何その言い方あ。親に向かって、そう言い方していいと思ってるの?!ねえ!」


ああ、うるさいなぁ。しかもしつこい。

母がしつこくガミガミ言ってくるのを無視して、私は自分の部屋に戻った。

何が母親だよ。

昨日の夜なんて、動画見ながらお酒飲んで寝落ちしてたくせに。偉そうに。


ランドセルを背負い、部屋から出ると、まだ何か言ってる。


「行ってきます。」


私は無視してアパートを出た。


『寿荘』


今どきダサい、漢字の名前。築30年以上の鉄筋2階建てのアパート。


「おはよう。麗華ちゃん。」

「おはよう。」

「麗華ちゃん、今度の日曜日、映画見に行かない?ママが送ってくれるって。」

「ほんと!?行きたい?」


隣の部屋の真奈ちゃん。

小6。

真奈ちゃんは1人っ子で、パパとママの3人暮らし。優しくて、小さい子。

そして、なんでも言う事聞いてくれる、大好きな友達。


「ねえ、真奈ちゃんのママが乗せてってくれるって。行っていいでしょ?」

「うん。乗せてってもらえるなら・・・」


よしっ!


母は免許を持っていない。

理由はよくわからないけど、うちは車が無いから、友達と出かける時は、いつも友達の親に乗せて行ってもらう。

前はよく、ゆなちゃんのママに乗せて行ってもらってたけど、最近は学校では遊ぶけど、乗せってくれる事は無くなった。

ともなちゃんはよく乗せて行ってるのに。

ともなちゃんもよく、ゆなちゃんと出かけてるのに、私は誘ってくれない。

ゆなちゃんと、ともなちゃんのママは性格が悪い。

それに比べて、真奈ちゃんのママは優しい。

いつも乗せてってくれる。

私は、真奈ちゃんのママも大好き。


◇◇◇◇◇◇


「いつもすみません。よろしくお願いします。これ、食べて下さい。」


母が真奈ちゃんのママにお菓子を渡す。


「え?これ、有名パティシエのお菓子だよね。こんな高価なもの・・・気を使わないでいいのに・・・。」


真奈ちゃんのママは申し訳なさそうな顔をしながら受け取る。

私と真奈ちゃんは、車に乗り込んだ。


「いってきまーす!」


私は母に手を振ると、母も笑顔で手を振り返した。


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