第90話

びっくりして涙も引っ込む。



俯けていた顔を上げれば、すぐ近くに八雲さんのつむじが見えた。



あたしと30㎝は身長の差があるから、滅多に見れるもんじゃない。



思わず、触りたくなるほど…可愛い…。



じゃなかった!!



八雲さんがあたしに頭を下げてる!?




「なんでっっなんで八雲さんが謝るんですかっ!?」




八雲さんが謝る必要がどこにある!?




謝らなければならないのは、言いつけを守らなかったあたしなのに!!




「八雲さん!!八雲さん!!」



顔…顔を上げて!




「何が守るだ…。守るどころか、気付きもせずケガまでさせて…」




テーブルの上でキツく握られた手が震えてる。



バカだ、あたしは。

自分のことばっかり。



こんなに八雲さんはあたしのことを考えてくれてるのに、怒ってるなんて勘違いして…。



さっきまでの怖さも不安も吹っ飛ぶ。




あたしは、八雲さんのキツく握りしめた手を自分の手で包んだ。

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