第82話
「花音さん」
花音さんの着物の袖をギュッと握る。
今、花音さんがやってくれたことは本来、従業員で、問題を起こしたあたしがすべきこと。
情けない…。
「ごめんなさい。お金はあたしが…」
「ハイネ」
払いますと言おうとしたら、静かに呼ばれた。
チビ姫ではなく、名前で。
「海斗と凛があんたを自分達の子として育てると言った時から、あんたはあたしの子でもあるのよ」
「花……」
「娘の責任を親がとるのは当たり前でしょ?」
パチンとウインクした花音さんが柔らかく、優しく微笑んでくれる。
その微笑みはまさに慈愛に満ちた母のよう。
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