第294話

蓮side



これ以上、チビネが喜ぶもんはねぇと思う。



食べ物じゃねぇけど。



横を見て、俺は笑う。




俺らはチビネが食べたいであろう物を買いにコンビニへ行ってた。



皆、買い物をして各々買い物袋を持って病室に戻る途中だ。




漸く、ようやくチビネが目を覚ました。


二日ぶりに。



寝顔を見るたびに・・・このまま目を覚まさなかったら・・・と怖かった。



『蓮くん‼』



あの声が聞けないかと、あの笑顔が見れないかと思うと本当に・・・・これまでに感じたことのないほどの恐怖だった。



だからチビネが目を覚ましたと聞いて、飛び上がるほど嬉しかった。



でも・・・・。



俺は数十分前のことを思い出す。



チビネが落ち着いたと、俺らは病室に呼ばれチビネと対面した。



ガーゼやら包帯やらが痛ましい姿。


そんなチビネが俺らを見て、大きな猫瞳を見開いた。




「皆‼皆ケガは!?痛いとこっ痛いとこない!?」




第一声がコレだった。



どうしてこの子は、こんなにも俺らの心配ばかり・・・。



自分は2日も眠ったままだったっていうのに。


ケガも俺らなんかよりよっぽど酷いのに。



その優しさに泣きそうになる。



俺らは間に合わなかった・・・・。


結果的には救えたが・・・。



こんなにケガを負わせてしまった・・・・。


なのに俺らの心配ばかり。



グッと唇を噛む俺の背を竜ちゃんが叩き、チビネに向かう。




「俺らは平気だ。ピンピンしてる。お前は・・・」



「ハーちゃん」




竜ちゃんがチビネの頭を撫で、ふんにゃり笑ったチビネが竜ちゃんの問いに答えようとした時、ケントさんがチビネを呼んだ。



その瞬間、病室の空気がビリっと張り詰める。



なんだ??



俺も竜ちゃんも、桂も麻也も、突然のことにケントさんを凝視する。




「どどどどどどどどどどどどした!?ケントさん!?」




チビネもいつにないケントさんの真剣さに狼狽えてる。



花音さんと凛さんは俯いて何も言わない。



なんだ・・・・?

何か良くない・・・




「指はきちんと動くようになる」




2本折れてた指は大丈夫ってことだな。


良かった。


なら・・・・?




「太ももの傷が・・・結構深くて・・・・痕が・・・残る・・・・」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・痕??



「・・・っっ」




俺はケントさんを見た。



眉間に皺を寄せ、何かに耐えるように歯を食い縛ってる。




「そんなっ‼」




麻也が叫ぶ。



俺も同じ気持ちだ。



チビネは女の子なんだぞ!?



傷・・・・なんて・・・




「ケントさんっっ‼」




ケントさんを責めても仕方がない。


わかってる‼

わかってるんだっっ‼



悪いのは、この事態を阻止出来なかった俺らだ。



だけどっっ



この子は何も悪くないのにっっ‼



麻也も・・・桂までも歯を食い縛って黙ってしまった。



「ケントさ・・・・」












「なーんだ」




「「「「「「「へ????」」」」」」」














なんとも間の抜けた7人の声が病室に響いたのだった。

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