第293話

立ち上がり今にも廊下に出ようとするハイネ。




「あんなことを言われるような人達じゃないっ‼‼」




怒りも露に叫ぶ。



本当にいつもこの子は・・・。



伯母の声を聞いただけで固まってた子が"家族"を愚弄された途端にソレに立ち向かって行こうとする。



"家族"のために。



もう"黒豹"がハイネの"家族"になってることが、嬉しい。




「落ち着きなさい、ハイネ。今あんたが行ったら、真中と田中の頑張りが無駄になるわ。それでもいいの?」



「っっでもっっ‼‼」



「真中と田中なら大丈夫よ。だって」




とっておきの頼れるバカ達が帰ってきたもの。



ドタドタと喧しい足音を立てて。




『キーキー、キーキー喧しい。ここを何処だと思ってんだ。人のことをクズとか見下す前に、あんたが常識を学べや』




いやいや、お前らの足音も十分喧しいよ。



低い低い声が聞こえてきた。


これは押さえてるが大分怒ってるわね。




「桂・・・・」




聞こえてきた声にハイネが反応する。




「うっうるさいっっ‼‼あたしはアレに話があるのよ‼アレを今すぐ呼びなさい‼アレのせいでっっ」


















ブチッッ‼












こんっっのクソババァっっ‼



黙って聞いてりゃあ、あたしの可愛い娘をアレアレと物のように呼びやがって‼



ガッと‼

ガッと前に出たわよあたし‼



ハイネと麻也の顔が引きつってるような気がしないでもないけど、今はあのクソババァを殴り倒すのが先・・・




だった。











「ハイネちゃんのことをアレアレ言わないでっっ‼」



「・・・・っっ‼‼」




怒りのためか震えてるけど、しっかりした声が廊下から上がる。



その声にあたしは足を止めた。



聞き覚えのある声。



常連客でも、声を聞けるようになったのはココ最近。





あの子、あんなに大きな声が出せたのね。




あたしを止めるためにアワアワしてたハイネの大きな猫瞳が、これでもかっ‼ってくらい見開かれる。



嬉しくて、そんなハイネが愛しくて、ギュッと抱きしめた。




「良い友達に出逢えたわね。ハイネ」




小日向桐子ちゃん。


ハイネのために友達のために、今ヒステリックババァに立ち向かってくれてる子。












「・・・・・・・っっハイ‼」




泣き声混じりでそれでもしっかり返事を返してきて、抱きついてくるハイネにあたしも麻也も笑った。

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