第68話

「突然、玄関の真横にある木に登りだした」



「ハ?」



「あ?」



「やっぱ猿じゃねぇか…………………がぁぁっっ!!」



桂に頭突きをくらわし、黙らせる。




「器用にベランダに移って、たったひとつ明かりの付いてない部屋に入っていった」



「……」



「それって」



「ハイネ…」




皆がその当時のハイネの気持ちを考えたのだろう。沈黙が部屋を支配するも。




俺は笑う。




ハイネが部屋に入ったのを確認して、バイクを置いてきた公園に戻ろうとした。




ガラッッ!!!




どこかの扉が開いたなと思ったら、ハイネがベランダからひょっこり顔を出した。




『?』



『あのっ!えっと…また、会えますか?』




小さな小さな声で、真剣な表情で紡がれた言葉。



多分その時の俺は間抜けな顔をしてたんだろうな。




『俺に…か?』




あれだけ、貶し暴言を吐いた俺に?




『ハイ!!』




澄んだ目が真っ直ぐ俺を貫いた。




もう、捕まってたんだろうな。




ハイネに。




『あんなとこで寝ないなら、また会ってやるよ』



そう言えば、パッと花が咲くように可愛く笑うハイネ。




『寝ません!!絶対!!』

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