第55話

「真木」



「あ?」




疑問がある。




ワシの真剣な声に、真木が睨むようにまっすぐ視線を寄越してくる。




「アイツは……なんや?」



奇しくもハイジも同じことを思うとるとは知らんワシは問う。




暴走族から"姫"を奪うという無謀なことをやってのけるほど、ハイジに執着しとるのに、ワシが聞いとるなかで一度たりとも"名"をハイジの名を呼ばんかった。




アレ。コレ。ソレ。




異様や。




好きなもんの名は、大事に呼ぶやろ?




ワシも皆がおる前やとハニーなんて呼んどるが、二人っきりん時は呼ぶで?




愛情をたぁっぷり込めて…な。




コイツもそうや。




"ハイネ"




たくさんの愛情が込めらてるんを、ワシは知っとる。




んで、ハイジがコイツを呼ぶんにも。




それなのに、アイツのは愛情とは正反対…むしろ。




「アイツは…」



「待て」



「?」



「!?」

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