第47話

すると、光が「そうだよ」と言ってるかのように瞬いた。




"黒豹"が黙って、寄り添ってくれる。




心配してくれてるんだね。




あたしは、その首にしがみつき、零れそうになる涙を堪えて笑う。




「いってきます」




父と母と同じくらい大事な人が…大事な人達が出来たの。




その人達とまだまだ一緒に居たい。




だから、もう行くね。


お別れの言葉は、これで良いと思う。




何年か何十年かわかんないけど、いつかまた二人のもとに"帰るために"、"おかえり。頑張ったね"と言ってもらうために。




あたしの言葉に大きく輝いた光は、頷くように上下に揺れた。




それを見たあたしはもう振り返ることなく走り出した。




だから。



皆が…"黒豹"が光に深々と頭を下げてくれてたことも、光が人の姿になりあたしと同じ泣き笑いの表情であたしを見てたことも




気付けなかったんだ。

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