第28話

「竜ちゃん。帰るべ。時間の無駄だ」



「そうだな」




俺らは、女に兄貴の居場所を吐かすことを諦めると、さっさと女に背を向けて歩き出す。




女の態度も言葉からも、兄貴が今回の犯人であることは間違いない。




だとすれば、探す方法は幾らでもある。




「待っ…待ってよ!!!!」




焦った女の声に、竜ちゃんが足を止めた。




「あたしを"黒豹"の姫に、吉良竜希の彼女にしてくれたら教えてあげても、いいけど!?」




………………………………………




俺も足を止めて、振り返れば、ニタァっと笑う女。




この女が竜ちゃんの女?

"黒豹"の姫??




「ちょっとぉ、聞きました??竜希の奥様」



「ええ。ええ。しかと聞きましたわ。桂の奥様」



「総長の女とか」



「"黒豹"の姫だとか」



「「うふふふふーー」」




二人で顔を見合せ笑いあう。




「なっ!何よ!?」




何が始まったのか、わからない女が叫ぶ。




「悪いな。あんたは全く好みじゃねぇし」



「"黒豹"の好みでも全くねえ」



「…………ぐっ…」




顔を真っ赤にして目を吊り上げる女に、俺らは笑う。

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