第8話

「ねぇ、母」



「な~に?」




中学に入ってすぐの頃だった。




一緒のクラスになった子に「"珍しい名前"だねー」なんて言われた。



それまで、気にしたこともなかった。




「あたしの名前って、どんな意味??」



「意味~??」




母は、おっとりとした子供のように無邪気な人だったな。




「最初はハコネだったわね~」




ハコネ!?!?



え?あの?




「颯(はやて)と寧々(ねね)の子供。の頭文字を取って、"ハコネ"」




ん…。

ちょっと納得…………??



「でもそれじゃあ可哀想だからって、颯がね」




うん。本当。

可哀想だ…。




「颯と寧々の愛しい子供で"ハイネ"にしようって」




ふんにゃりとそれは幸せたっぷりに笑った母。




「愛しいって///」



「漢字がね~。あたしたち二人とも馬鹿だったから思い付かなくて…だからカタカナ」




それが、

あたしの"名"の意味。

あたし"らしい"。



「あなたがあたしたちの所に生まれて来てくれて、父も母も幸せよ、"ハイネ"!!」



「んにょぁぁぁぁ!?」



「お?なんだ、なんだ?面白そうだな!!父も混ぜろー!!」



「にぎゃぁぁぁぁあ!!」




いつもの朝だった。

3人で朝御飯。

1人娘を構いたがる大好きな両親。



こんな毎日がずっと続くと思ってた。

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