第21話
「おねがいだっ…めをあけてくれっ…サクラ!」
こんなときに限って、お姫様と名前がほとんど一緒。
後からわざとだと知ったけど、演じている最中は緊張よりドキドキが強かった。
黙って目を閉じて、ひたすら司の合図の台詞を待つ。
近くに気配を感じる。
近寄ったり離れたりしている。
ドキドキ、ドキドキ。
司のこと、ドアップで見たことがないから薄目を開けて見ちゃおうかな。
なんて、考えていた。
司が私の左側に来るのがわかる。
客席の方を向いて、フリのキスが見えるようになっている。
頬に手を添えられて、そろそろ…。
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