第3話

当時の私は、大人相手に自己紹介などの経験が無く、自分より遥かに大きな大人に名前と年齢を言うのはビクビクものだった。


だけど、

「桜子ちゃん?宜しくね」



初めに挨拶をしてくれた御堂さんの奥さんが屈んで目線を合わせてくれて優しい目を向けてくれていたのが嬉しかったのを覚えている。



「ほら、司(ツカサ)、あなたも挨拶しなさい」



次に、いつの間にかこちらを見ていた小さな男の子が前に出てきた。



「みどうつかさです。

5さいです。


よろしくおねがいします」



同い年の彼は、慣れたように挨拶をして深々と頭を下げた。



5歳にして、何の抑揚もつかない挨拶をする子を初めて見たんだ。

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