第2話

味すらももう覚えてなかった。

そして、別れて翌日、会社に出勤すると

「おい、川口、お前、たしか東京出身だったよな? 専務が本社から視察に来るんだよ、悪いけど任せた」

そう言わせて、私は青ざめた。

「ちょっと、困ります」

そう言ってみるもののもう決定事項なのだろう。

鷹をくくって社長室にノックをしてはいる。


そこには昨日と違いスーツに身を包んだ彼が立っていた。

私は深々と頭を下げて

「川口里穂と申します、本日はよろしくお願いいたします。 横山専務」

そう言ってゆっくりと顔を上げるとムスッとした顔をしていた。

あっやばいと思った次の瞬間専務は社長に

「少し席を外して貰えないか?」

そう言われて慌てて私が社長に首を振ると

「何かうちのものがしましたか?」

「いや、少しこの子と話がしたいだけだよ」

その迫力に押されとのか社長が了承して2人だけにされてしまう。


「あ、あの」

気まずそうにそう言えば無言で近づくといきなり顎を持ち上げられた。

「本当なら一発叩きたいところだけど、なんであんな真似している?」

あんなマネとは、きっとパパ活の事だろう。

「お金が少なくて地方って」

その言葉にため息を付くと

「なるほどな」

とだけ呟かれた。

「今夜の予定は? 誰か入れた?」

そう聞かれて戸惑う私。


とりあえずこれ以上機嫌を損ねたくなくて

「今日空いています」

やっとの思いでそういえば何事も無かったのか、満足そうな顔をする。

その顔が優しくてドキッとしてしまう。

そうして、私はまた彼とホテルに入った。

そして、食事をしてお金をもらって解散するはずだったのにそのまま2回戦へと突入していた。


今日の彼は機嫌が悪かったのかもしれないと思ったもののもう後の祭りだろう。

事を終えて彼が眠りに付くのを見届けてから私はホテルを後にしたのだった。

それから1週間ほど経ってから再び彼は現れたのだ、しかも今度は神奈川支部ではなく私の家の最寄り駅で……、

「なんでですか?」

そう聞けば彼が呆れたようにため息を付いてから

「お前が心配で来たんだよ」

そう言われてしまう。


「俺は、お前を抱くことにメリットがあるかどうかで抱くか決めようと思っていたけど、もうやめた、お前は俺のものだよ」

そんな言葉を言われて私は唖然とする。

「政略結婚しようか? 君はお金にこもっているようだし、俺の傍に置いておいた方が良さそうだ」

その言葉に唖然とする。

完璧に私の落ち度である。

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