第2話彼女との出会い

 最近ハマっているのは出会い系サイト。



 出会い系。

 とは言え、出会う気なんてさらさらない。


 ほら、良く出会い系で女に会ったら凄いのが来たなんていう怖い話耳にするじゃん……

 ごめんなさい。嘘です。


 本音は、自分の容姿に自信が無いから会いたくても会えません……

 その上、無職で、初対面の相手(女)と話すのが苦手と、いうのがデカい。

 会いたいんだよ。

 でも、嫌われるのが怖い。怖すぎる。

 でも、会いたい訳。

 こんな俺の気持ち分かる?


 現在。俺のメル友は三人。

 中でも【みちる】と言う女の子を気に入っている。


 なんていうか、とりあえず優しいんだよ。俺の相談を真剣に聞いてくれるし、こまめにメールをくれる。しかも……。かなり可愛いんだよね。

 ぱっちり二重瞼の大きな目。

 さらさらの栗色の髪。


 俺が好きな芸能人にどことなく似ている……、いや、そんな芸能人なんかより可愛い彼女が俺とメールしてくれる。

 それだけで、十分だった。


 メールだけの関係だけどさ……

 彼女が出来たような気分に浸れたんだよ。

 みちるから一通のメールが届いたのそんな気分の時だった。


『優斗君に会ってみないな』

 ……………

 ……………

 この、シチュエーション!!普通の男なら喜ぶ場面なのだろう。

 実際俺も、嬉しいし。

 だが、俺は素直には喜べない!! 

 とりあえず、気分を落ち着ける為にソファーに座ると炭酸飲料をグラスに注いで飲み干した。


 ただ、電源が入っていないテレビの画面に写し出された自分の顔を見て溜め息を漏らした。

 会って嫌われるくらいなら、メールだけの関係がいい。心底そう思うのは会って嫌われる事が怖いから。


 誰かと深く繋がりたいのに……、嫌われる事が怖くて近付く事なんて無理。


 テーブルに置いた携帯を手に取ると、


『会わない方がいいよ。

 俺、格好良く無いから……』


 君は僕を嫌いになる……

 そう考えながらメールを返す自分が虚しくて堪らない。

 あー、不細工って事をバラしたんだから返事来ないかもな。でも、会って傷付くくらいならこれで良いんだ。そう思った瞬間、テーブルに置かれた携帯がカタカタと音を立てて震えた。


 み、みちるちゃんだよね?

 返事早っ。

 と、いうか不細工を公開したのにも関わらず返事してくれるなんて、いい子。

 嬉しい気持ちで、携帯に手を伸ばした。


 はっ!!!もしかしたら、あんまり良く無いメッセージの返事が来てるかも知れない……


【不細工の癖にメル友探してんじゃねえよ】

【メル友止める】


 受信したメールがそんな内容だったら。傷付く。でも、意を決しメールを開いた。


『顔なんてどうでもいいよ。

 優斗とメールして楽しいから、会いたいだけなんだけど……、駄目かな?』


 そんな、内容のメールに涙腺が緩みそうになった。なんて優しいんだよ。元々好きだったけど、本気で好きになりそう。


 もう、いいや。嫌われても、馬鹿にされても、みちるちゃんを好きで居よう。


『いいよ。でも、俺の顔見て引かないでね』


 そう、メールを送ると速攻で返事が返って来た。


『やったー!!今日の夜、暇?』


 え!!今日?

 突然過ぎるだろ……

 そう思いつつも、出会える事はやっぱり嬉しい。

 それに俺は何時だって暇だ。

 なんたって、自宅警備員&パチスロが俺の職業。って、そこ!!笑うなよ!


『暇だよ。でも……、みちるちゃん俺の顔見たら引くかも知れない』


 って、何度も何度も同じような事聞いて女々し過ぎる、俺。でも、不安が拭えないんだよ。それくらい外見に自信がない。


『絶対、嫌わないよ。

 優斗君とメールしてると楽しいもん。

 不安にならなくて大丈夫だよ。ねっ?』


 みちるは俺が欲しかった言葉をくれる。

 なんて、人の気持ちが分かる優しい子何だろう……



 そう、多分彼女は手に取るように俺の気持ちを理解していたのかも知れない。


 そう

 俺の、気持ちも性格も

 理解して

 俺をターゲットとしたのかも

 知れない

 獣のような優れた嗅覚で

 自分を見捨てない男を__

 自分が優位に立てる男を__

 見つけようと


 □□□□□

 21:50

 みちると待ち合わせした公園に向かうと、すでに公園に人影が見える。昼間もほとんど人が居ないような小さな公園。電球の切れかけた街灯が消えたり付いたりを繰り返し不気味な雰囲気が漂っていた。


 こんな場所に一人で待ってたのか?

 しかも、ブランコに座って……


 普段なら不気味と思えるような状態も、緊張で冷静さを失った状態のせいかさほど不気味には思わない。そんな事なんかより、顔を合わすのが恐怖だ。

 顔を合わせた瞬間に「あたし、帰る」なんて言われたら……、傷付く。


 でも、会うと約束をした以上逃げる訳にも………、いや、むしろ逃げてしまおうか?

 そうしたら、傷付く事も無い。


 色んな考えが頭の中をよぎり、逃げる事も近付く事も出来ずにその場に固まった。

 情けないだろ?

 そしたら、ブランコの上にあった人影が立ち上がり俺の方に近付いて来る。その姿はみるみるうちに俺との距離を縮め、もう相手の顔が確認出来る程の位置だ。


 写メで見るよりずっと綺麗で、可愛くて、スタイルの完璧な女が笑顔で俺に近付いて来る。

 その笑顔はまるで人形みたいで、人間ぽさが感じられなかった。

 例えるなら……


 作られた笑顔。


「優斗君。だよね?」

「そ、そうです」


 緊張しすぎて、それだけしか答えられない自分が情けない。

 みちるは俺を見てがっくりしただろうか__


 顔もそんなに良く無い、緊張しすぎてまともに会話すら出来ない俺に……、ガックリするよな、普通。

 そんな事を考えながらうなだれていると、


「優斗君。写メより実物の方がかっこいいね」


 思いもしなかった言葉を掛けてくれたみちる。そんな、みちるの台詞さえも上手に受け止める事が出来ない。


「そんな事無いよ」


 からかわれているかも知れない。それに、こんな美人の女が言う事だから、余計にそんな風に捉えてしまう。

 俺は臆病物だ。


 みちるの顔も、性格も好きで近付きたいと思うのにネガティブな感情がそれを邪魔する。

 素直になりたいのに、素直になれない。


「なんでー?かっこいいよ!!

 あたしずっと優斗君に会いたかったんだよね。本当、優斗君とのメールが楽しくて…。好きだったんだよね」


 みちるは笑顔のまま、俺の腕に腕を絡めて来た。


 好き……?

 今まで、そんな事言われた事なんて無かったから嬉しかった。しかも、俺とのメールが楽しかったなんて言われたら……、幸せで仕方が無い。


 内面で選んで貰ったみたいな安心感だってある。

 いや、今はそんな事より……


 みちるの腕の感触がヤバい。

 意外と身体密着させてくるし。


 なぁ、女ってこういうモノなのか?

 まぁ、嬉しいんだけど。

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