BLLIS=BATTLEFIELD

@Kaiya317

第一戦目 独賊の烙印

<あらすじ>

広大なアンマー大陸を支配する大国、セラディア王国。7000年の歴史を誇るこの国家は、冷酷な支配者階級「ハミナス人」によって、多民族を抑圧し続けてきた。しかし、その絶対的な力の裏側では、支配から解放されようとする者たちが各地で蜂起していた。彼らは「独賊」と呼ばれ、王国の安寧を揺るがす存在となっていく。


寒冷なセラディアの片隅、貧しい街で暮らす11人の子供たち。

彼らは日々の厳しい現実を忘れるために、「独立国家ごっこ」という遊びに興じていた。しかし、成長した彼らは、次第に遊びを超えて本物の革命に身を投じるようになる。

王国に挑む彼らは、独立と自由のために戦うことを誓う。


その道の先に待つのは、自由と恐怖、勇気と残酷、悪事と苦悩の交錯する世界。路頭に迷い、憎悪と悲哀の渦に巻き込まれながら、彼らは自らの戦いに立ち向かう。そしてその戦いの果てに、彼らが手に入れるのは何か? 幸福か、さらなる絶望か。


『あなたは、この戦場を許せるか?』


              





   【セラディア王国ガイドブック】


<アンマー大陸>

約2000万平方キロメートルの広さを持つ大陸。

かつては多種多様な民族が各方面で領土を築いていたが、セラディア王国の実効支配により、領土全土を掌握した事で巨大な島国国家となった。

暑い時期は2月下旬から3月中旬しかなく、4月になると気温が低くなり、9月から1月にかけて大陸全体に雪が降り始める。


【氷団一覧】第壱氷団・第弐氷団・第参氷団・第肆氷団・総統大氷団



《国家一覧》


【セラディア王国】

約7000年の歴史を持つ大国(他の民族からの歴史を含めている)。

多民族国家であるが、国の覇権は“ハミナス人“が握っており、それ以外の人種は差別や偏見など最悪の場合は弾圧などを受けている。

ハミナス人の恐怖体制に敷かれた他種族の中には、独立を掲げる事が多く、各地で壮絶な紛争が絶えない。

資源が豊富で、圧倒的な軍事技術を保持しているが、地方によっては兵士不足の深刻問題を抱えている。



【アスクリビオス教国】

セラディア王国内、第弐氷団・北部方面を内密に拠点としている、独立国家。

恐怖体制下で国営の事業が行われており、武器密売・違法賭博・薬物密売・軍事特需・暗殺依頼など非合法ばかりの行為で軍資金調達をしている。

国家の主要格の大半は“亜仁“で一定されているが、セラディア王国とは違い、差別や迫害などの問題視はされていない。

それ故に独立国家の中では、自由度の高い多民族国家でもある。

 


 <登場種族>

1.ハミナス人

•特徴: 白い肌

•瞳: 水色か緑色

•髪: 銀色


2.亜仁

•特徴:一重、二重瞼

•瞳: 赤

•髪: 薄茶色で男女共に短髪




3.ノークタ人

•特徴: 標準的な黒い肌

•瞳: 薄い白の透明

•髪: ストレートの長髪

•耳: 尖っている


4.クリスタリウム人

•肌: 淡い青色から透明感のある白

•瞳: どの種族よりも大きく、澄んだ青色や水色                    •髪: 明るい水色で、輝くような質感

•特徴: 大きな目は高い感受性と鋭い洞察力を持つ。



5.ホフヌング人

・特徴:男女共に高身長の種族

・瞳:緑色

・髪:紫色







➖独賊の烙印➖


社会秩序を破壊し、法や規範に反した者は『賊』の肩書を背負わされる。

海のならず者は“海賊”、山のならず者は“山賊”、空のならず者は“空賊”。


血に塗られた死体の山の座に就いたハミナス人、それに逆らう者は“独賊”と呼ばれる。


雪の地“セラディア王国”では、止む事の無い吹雪と同時に、終わる事のない弾丸の嵐が降り続ける。

セラディア王国の正規兵“セラディア陸軍”は、全兵士完全装備で任務遂行を目指す。

兵士達が政府から命じられた任務は、セラディア王国に独立宣言した“ヤスケ国”の制圧作戦。





*第壱氷団・東部方面 ヤスケ国


ヤスケ国はノークタ人のみで構成された小国。

ヤスケ国はハミナス人の横暴な政策に対抗すべく、セラディア王国の王族に宣戦布告の声明を出した。

わずか一万しか満たない兵力で、計り知れない大軍を相手にするのは、判断力が欠如してるかの様に思えるが、彼らは藪から棒な行動をしない。

大昔に侍である自分達の先祖が建てた、古きある広大な城で、セラディア兵士を迎え討つ準備を整えていた。


鍛え抜かれた鋼の肉体・強靭な精神力、密輸で手に入れた小銃五発入りの“ボルトアクションライフル”、ヤスケ国の職人が独自で開発した3本の矢を同時に放てる“クロスボウ”、研ぎ澄まされた槍と刀、大量の爆薬と大砲。

ヤスケ国のノークタ人は、籠城戦で地の利を活かして、セルディア兵相手に勝利を収め、セルディア王国に散らばっている独賊同士に革命の炎を呼び覚ませるつもりでいたが、これだけの火器を持ってしても、無謀な戦いで終わる事に彼らは“敗北“して知る。


ヤスケ国の兵士の装備は、鉄砲隊は顔に半首を被り、弾丸ベルトを肩にかけ、長い長髪を一本にまとめて後ろに結ぶ。

身軽に行動出来るように甲冑は着用せず、革の長靴・剣道袴・胴台のみ。

古くから侍の文化を重んじる上流武士は、兜を被り、一発の弾丸程度なら防げる鎧を纏い、一心不乱で己の勤めを果たす。

屈強な侍達が命懸けで守る大将は、城の上部にある部屋“天守閣”で鎧を纏い身構える。

大将は成人を迎えたばかりの皇女。

ヤスケ国の領土は山に囲まれた小国で、一列に並んだ赤い鳥居・赤瓦屋根の琉球民家、寺院や和風庭園が多く設置されている和風街。

城郭だけで約2000ヘクタールの面積・東京ドーム約426個分。

皇女が住んでいる城は、外観が金箔が施された巨大な城。

道は石畳で出来ており、坂が多く、城壁も石垣で築かれている。

攻略は至難の業で、セラディア陸軍は苦戦を強いられる。



セラディア陸軍の装備は、一兵に小銃“A19ライダン”を支給される、このライフルは世界初の半自動小銃。

A19ライダンのストックやフェアエンドといった主要部分は、他の軍用小銃と同様に丈夫な木製。

比較的軽量で扱いやすい構造になっている。

利点は7発の弾丸を装填した半ドーナツ型の弾倉を横側部分に差し込む、銃の後部で、肩に当てて安定させるストックは折りたたみ式で持ち歩きやすい、固定する時はトグルラッチ(パッチン錠)で固定。

欠点は接近戦には不向きで、肉弾戦に持ち込む時に鈍器としても扱えるが、攻撃を受けた時の耐久性は低く壊れやすい。

白兵戦の際は、銃剣を装着して刺突攻撃が有効的。

幹部兵はTPI30(拳銃)を携行を許されている、この拳銃はバレルの長さは約23cm、マガジンは10発、全長約29cm、他の拳銃よりもやや大きめの小型拳銃。

使用する際は、取り外してある細長いバレルを、それ以外の固定されているレシーバー部分などに回して取り付ける、使用しに時は再びバレルを反時計回りに回して取り外す、そうしないと腰付近に装着しているホルスターに携帯できない。

実戦で使用する際に無駄なタイムロスをもたらせる為、好んで使う兵士は少ないが、威力は他の拳銃の3倍はある。

それと1人、三つの衝撃式手榴弾“クロノス”を支給される。

その手榴弾は丸型で表面はガラス製で囲ってある、内部は透明の一見水の様な爆薬液体。

使用する手順は、まず5回ほど縦に振る、すると透明だった爆薬はカラフルに変色する、次に上部のピンを抜き4秒以内に投げる、4秒以上経って投げた場合、中身の爆薬が衝撃で外に放出しても不発で終わる。


主な三つの色の効果、赤・火炎弾 茶色・炸裂弾 白・煙弾。


大まかな軽兵の通常装備だが、重火器の兵士は小銃を持たない代わりにグレネードランチャー“ジョンソンM”を携行、それとクロノス手榴弾ではなく、大型ダイナマイト“ビックバン弾“を支給される。

炸裂弾効果を見せるクロノス弾よりも5倍の威力を放つダイナマイトで、形状は楕円形、長さ32c・直径18cm・重さ10キロのダンベル・色は黄緑色。

使用方法は、30cm~40cmの導火線を点火して、投げる際は両手で持つ、二階建ての建物を破壊する爆発力のため、投げたらすぐに10メートル距離まで離れる。

欠点は、導火線が長すぎると敵に消化される恐れと、逆に導火線を短くしすぎると避難が遅れ自爆する可能性、重量であるために敵兵の境界線に近づかなければならない。


寒さを補う為に大きめのフード付きの濃い茶色の防寒着を纏い(腰から上半身部分)、下半身は半長靴と白の戦闘ズボンを着用。

頭部を守る為に、耳まで隠れる黒い剛鉄製のヘルメットを着用(防寒着のフードでヘルメットを覆うことも出来る)。


セラディア兵とヤスケ国の戦士、戦力は天と地の差、兵力もセラディア側はヤスケ国の10倍の数を派遣している。


ヤスケ国は、雪粒により国全体が芸術的な幻想に包まれる、戦場にするには惜しい場所、しかし、兵士達はそんな事を忘れ、ヤスケ国は戦火が燃え盛る。



*ヤスケ国制圧作戦の戦課記録

セラディア政府が陸軍に侵攻作戦を命じてから5日経過、本来の作戦では1日で任務遂行を目指していたが、敵の粘り強い防衛により、無駄に兵を死なせ、無駄に時間を経過させてしまっている。

六日目の朝でようやく城郭まで潜入成功、しかし、市街地で多くの兵士を失い本来の作戦は破棄され、現場の指揮官は別作戦を実行する。


セラディア兵の攻撃部隊は、A中隊・B中隊・C中隊・D中隊と構成され、ヤスケ国の領地を四方八方に囲んで同時攻撃を開始した、1日目でD中隊はほぼ壊滅状態、B中隊も3日目で攻撃不可能状態となりC中隊と合併する。

A中隊は三分の一の兵士を失いながらも、6日目で城郭の出入り口の城門を破壊して、D中隊と合流して城郭の制圧をするつもりだったが、初期作戦は中断となる。

D中隊の代わりにC中隊と合流して、別作戦で続行。

軍人は普段から理不尽に耐える精神を心に刻み込まれているが、耐えるだけでは戦争に勝てない、真の幹部兵士は理不尽を耐えるのではなく、解決する事に意味を見出している。


A中隊は損害になりながらも、他の中隊より体制を保ち城郭の陣地までたどり着いたことから、中隊長クラスの能の差が散見される。


A中隊指揮官の"アレクサイ=ヴォルフ"は、城郭の物陰に隠れ、大勢の部下と共にD中隊の合流を待つ。



アレクサイ=ヴォルフは、40代前半でやや小太りであるが、そんな先入観を忘れさせる程、戦地では過敏に動く。

階級:大尉 兵種:小銃手・軽兵 未婚者 喫煙者。

彼も有能な指揮官であるが、その配下も有能な兵士を揃えている。


モルスカヤ=カスラ

ヴォルフの部下でもあり右腕的存在で、ヴォルフと共に数々の修羅場を超えてきた。

年齢は45歳、入隊時は25歳でヴォルフよりも歳上だが、職場上は後輩に当たる。

ノークタ人だが、細身で長身。

階級:曹長 兵種:小銃手・軽兵 未婚者 禁煙者。


その他には、双子の兄弟"ジョルダとジョナン"。

階級は共に2兵曹、兵種は衛生兵 年齢は24歳。

2人とも今回の戦場が初体験ではなく、一年半前にも独立国の制圧作戦で生還している。


決して無能ではないが、ややヘタレな“トカレーフ“。

兵種は小銃手の重兵 年齢は24歳。

恵まれた体格をしており、今回初の実戦。


白い戦地は、ヤスケ兵とセラディア兵の血で赤く染まり、清冽の地と化する。

爆撃後の煙、火薬、死体の腐敗、病みつきになる様な匂いは何一つない。

止むことのない銃弾の嵐に、聴力は低下する。

戦場では、デカい声を発声して仲間と連携をとる。


ヤスケ兵の透明人間の様に姿が見えない攻撃に戸惑うA中隊。

隊長のヴォルフが、物陰から手鏡で敵を確認するが、手鏡に銃弾が被弾、結局捉える事は出来ずに困惑する。


ヴォルフ「カスラ! 今敵が見えたか!」


カスラ「いえ! 何も見えません! どこから撃ってきてるのか見当もつきません!!」


ジョナン「中隊長! C中隊が到着しました!」


C中隊がA中隊と合流。

隊長同士が今後の作戦を話し合う。

銃弾よりも大声で会話をする2人の隊長。


C中隊長「このまま前進してもやられるだけです!! 戦車の応援を要請しましょう!」


ヴォルフ「ダメだ! 道が狭くて段差だらけで死角も多すぎる、戦車なんて詰まるだけだ! 歩兵だけでなんとかするんだ!!」


C中隊長「でもこのまま進んだら、いい的になるだけです!!」


ヴォルフ「建物の中に入りながら、出来るだけ前進するんだ! C中隊は城郭の敵を制圧しろ! A中隊は城内にいる敵を制圧する!! 分かったか!!」


C中隊「了解!!」


C中隊は城郭の敵の制圧に乗り出し、ヴォルフは生き残っている数百人の部下に作戦を指示する。

大声で発令しても全員には届かない、前方にいる兵士達は後方にいる兵士に伝言して伝えていく。


ヴォルフ「これよりA中隊は城に目掛けて前進する! 行動する際は建物の物陰に入りながら進め! 固まって行動するな、出来るだけ散開しろ! 間違って仲間を誤射するなよ、それでは状況開始!!」


A中隊の兵士達「状況開始!!」



ヴォルフは近くの建物に入り、城を目指す、数十名が中隊長のヴォルフに続く。

城郭だけで約2000ヘクタール、どこからともなく侍が現れる。


城を目指すには足を止めずに歩き続けなければならない、坂道が多い敵の領地はセラディア兵にとって罠も同然。

ヤスケ兵は上から下に目掛けて射撃、セラディア兵は下から上に目掛けて射撃。

しかもセラディア兵に下りはない、30度の石畳階段と坂道を上り続ける、階段ならまだしも、雪に積もった上がり坂の登りは滑りやすく足止めをくらい、敵にとって狙いやすい的になる。

市街地とはまた違う厄介な戦場、それを攻略する為に建物に入り敵から姿を消して進むが、驚異なのは弾丸だけではない。


C中隊は城郭の中心位置に入る櫓門を手榴弾で破壊、A中隊長から命令を受けた通り、二の丸、三の丸 ( 本丸を取り囲む防御用のエリアで、侍の守備や居住のために使用されている)、櫓(やぐら、見張りや防御のために建てられる高い建物)などの敵の殲滅を実行する。

C中隊の兵士は建物の中に敵がいないことを確認したら、そのまま前進、しかしその行為に落とし穴が待っていた。

敵兵がいない建物には爆薬が仕掛けれており、たった一回の爆弾攻撃で数十名の兵士が死傷した。


石畳の道には、雪に積もって隠れている大きめの撒菱(尖った金属片や鋭利な器具)が無数に地面に設置されており、分厚いブーツの半長靴の上からでも突き刺さる。

死には至らせないものの、セラディア兵の心を殺すには効果的。


神出鬼没に現れる、忍装束のヤスケ兵。

屋根の上や建物の天井に張り付き、セラディア兵を銃撃や斬撃をしてくる。

1人でも殺めれば、すぐさま華麗に逃避していくので狙いが定めづらい。


天守閣や本丸からの砲弾攻撃もセラディア兵士にとって驚異、砲弾が爆発後には栗並みに小さい撒菱が飛び散る。


“グア➖➖➖➖➖!?” “衛生兵!! 衛生兵!!” ヤスケ兵の地で断末魔を上げていくセラディア兵。


カスラ「ブービートラップが仕掛けられているぞ、地面にも注意しながら進め!!」



劣勢に立たされているセラディア兵に思えるが、多くの死傷者兵を出しながらも少しずつ少しずつヤスケ兵を追い詰めていく。

A中隊は城郭の中心部、本丸付近まで到着。

C中隊は城郭のヤスケ兵を2割ほどまで撃退した、6日も続いた激戦にセラディア兵もヤスケ兵も疲労は隠せない。

しかし、そこに隙が見えるのは防衛側で攻める側はいつでも体力の補充は出来る。

現にセラディア側に3万の増援が到着、ヤスケ国に崩壊の兆しが見え始める。



カスラは200の兵士と共に本丸にいる敵兵の誘導をする、そうする事で残りのA中隊兵士が容易に城内に侵入出来る。


カスラは重兵を使い、裏から回り込んで奥の本丸の建物を破壊、真正面の建物に潜んでいる敵兵は軽兵のみで壊滅する作戦を思いつく。


カスラ「バグ重兵! バグ重兵! ・・・重兵はどこだ!!」


重兵を呼びかけるが応答はない、逆に別の応答が聞こえてくる。

カスラ部隊の背後から“衛生兵!! 衛生兵!!”と叫ぶ声が聞こえる。


衛生兵が叫び声が聞こえる方向に駆けつけて、物陰に隠れて子供の様に泣きじゃくる重兵“トカレーフ”。

彼は仰向けに倒れながら、小指を抑えて「衛生兵ーー!!」。

衛生兵はトカレーフの体を見たが、どこにも血を流している部分は見当たらない。


衛生兵「大丈夫か! どこか撃たれたのか!!」


トカレーフ「衛生兵! 衛生兵!」


衛生兵「しっかりしろ!! どこを負傷したのかを言えって! じゃなきゃ何も出来ん!!」


トカレーフ「・・・突き指」


衛生兵「・・・んなもんは気のせいだ!! 曹長がお呼びだ早く行け!!」


衛生兵はトカレーフの頬をビンタ、泣き止んだトカレーフはカスラの元に向かい指示を問う。


カスラ「バグ重兵はどうした!」


トカレーフ「今この場にいる重兵は自分だけです!」


カスラ「じゃあお前でいいから、裏に回って奥の建物を破壊しろ!!」


トカレーフ「マジですか!!」


カスラ「ビックバンは残してあるだろ、それを使え!! 正面の敵は自分達で片付ける!!」



本丸の広大な庭園で、死闘を繰り広げる。

ヤスケ兵は建物の隙間からガトリング砲を連射、カスラ部隊は石垣や石積みに体を隠して敵の弾が切れるのを待つ。


カラス「撃ち返すな、指示するまで待て!!」


銃弾や弓矢がゲリラ豪雨如く降り続けるが、突如攻撃が止んだ。

カスラはそっと顔を出して、前方を確認する、敵の姿は見えなかった。

黒色火薬の煙幕の影響により、視界は白い煙に包まれる。

すると白煙の中から何かが殺気を放ちながら、自分達の方に突進して来るのを感じたカスラ。


なんとヤスケ兵の戦士侍が、完全武装の鎧を纏い突っ込んできた。

その姿は、飛び道具を持たずに槍と刀のみを獲物にしてる事から白兵戦に持ち込むつもりだった。


カスラ「撃ってーーーー!? 突っ込んでくるぞ!!」


ジョルド「ウオーーーーー!!」


何発か被弾しても死を覚悟したヤスケ兵は倒れない、最前列のヤスケ兵が弾除けになり後列の同士に意志を繋ぐ。

赤と茶色の手榴弾を投げても止まらない特攻攻撃、セラディア兵は戸惑うが、屈指の思いで白兵戦に挑む。


セラディア兵「独賊が!!」


ヤスケ兵「野蛮人どもが!! 思いしれーーー!!」


セラディア兵「セラディア王国の意地をーーー!!」


ヤスケ兵の斬撃はセラディア兵の小銃すらも真っ二つにする。

小銃を破壊されたカスラだが、兜の面を被った侍を素手のストレートパンチで怯ませる。



単独のトカレーフは、なんとか裏に回り込み、隠密にビックバン弾を点火して、建物に放り込む。

すぐに距離を置く、2階にいる小銃手のヤスケ兵に姿を見られ狙撃されそうになったが、その直後に爆発。

トカレーフは与えられた任務を遂行した。


白兵戦側も、接近戦では有利な刃物を持つヤスケ兵に苦戦したが、増援の到着により押し始めるカスラ部隊。

それでも撤退はしないヤスケ兵、もはや逃げ場所はないと確信し無敵状態となったヤスケ兵は、1人でも多くセラディア兵を道連れにしていく。


カスラは格闘のエキスパート、背後から動きを封じられても柔道技で投げ、たった一本の銃剣で兜と面頬を被った巨体な侍の片目に投げ、命中させて視界を奪う。


ジョナンの双子の兄のジョルドは何とか増援が来るまで耐え抜いたが、池に潜んでいた忍装束のヤスケ兵に背後から斬られそうになるが、間一髪で気付いたカスラの拳銃攻撃援護によりヤスケ兵は首に被弾、ジョルドは事なきを得る。


カスラ「ジョルド!・・・無事か!!」


ジョルド「異常無し!!」


カスラとジョルドは微笑み合うが、油断した隙に首に被弾したはずのヤスケ兵が息を吹き返し、最後の力を振り絞り、ジョルドを・・・。


カスラ「ジョルド!?」


*6日目の午前 ヤスケ国の制圧作戦完了 セラディア王国の勝利。


A中隊長“アレクサイ=ヴォルフ” ヤスケ国の総司令官である皇女とその一族全員の死亡を確認。

文明と王族を失った事で、ヤスケ国は崩壊。

ヤスケ国の捕虜は民間人のみ、兵士は誰も降伏しなかった。

セラディア兵側も1万人近くの戦死者を出した。


セラディア陸軍は状況終了した事で、生き延びた兵士は安堵したが、勝利に浮かれる兵士は誰1人いない、いるとすれば王族と政府の上層部だけだろう。

一部の兵士達はヤスケ国の国旗を燃やし、制圧したヤスケ国の土にセラディア王国の旗を突き刺して立てる。



ヴォルフ「・・・そこで寝てるのは誰だ?」


天守閣から戻ってきたヴォルフは、壮絶な戦場の時とは違い、小声でカスラに問いかける。


わずかに生き残ったA中隊の兵士達は固まり、原型だけ留めている同士達の遺体を一箇所に集める。

ヴォルフは、首には包帯、両手を重ねて顔を白い布で隠している遺体に1番興味を示す、すぐ側にいるカスラが答える。


カスラ「ジョルドです・・・今さっきほど、息絶えました」


ヴォルフ「・・・」険しい表情。


カスラ「ジョナンに兄が死んだことを伝えないといけません」


ヴォルフ「その必要はない」


カスラ「・・・なぜ?」


ヴォルフ「ジョナンも首だけ残して、あの世まで吹っ飛んだ」


増援が到着した事で、城内の敵を淡々と排除していき、慎重に最上階まで登っていった。

最上階の御殿には、大将の皇女とその王族達。

王族達の中には、まだ幼い子供もいれば、大半が成人を迎えてない王子ばかり。


ヴォルフは部屋には入らずに皇女に降伏を呼びかけたが、応答無し。

諦めきれないヴォルフは、武装解除をして再び降伏を呼びかけようとしたが、交渉の役はジョナンが志願した。

部屋に入り、温和な表情で近づきながら、「戦争は終わった、もうこれ以上誰も死ぬ必要はない」「投降すれば安全は保証するから」。

しかし、そんな説得は虚しく、皇女は残った爆薬を点火させて、一族もろとも心中を図る。

ジョナンは待機しているヴォルフ達に大声で「逃げろ!!」と叫び、おかげでヴォルフ達は素早く反応して、窓から外に飛び出した。

なんとか捨て瓦の屋根の上に着地して避難、もっと高い威力の爆薬だったら、爆風で吹っ飛び最上階から落下死していただろう。

ジョナン以外は助かったが、肝心のジョナンは避難が遅れ、戦死。


双子のセルディア兵士“ジョルドとジョナン”、今回の戦争で手柄を挙げて故郷にいる、女手一つで育ててくれた母に武勇伝話を持ち帰るつもりでいたが、今回は生還できなかった。



ヴォルフとカスラは部下や他の兵士がいない所で、政府の愚痴を始める。

ヴォルフは葉巻をふかし、カスラは軍用のマグカップで砂糖入りのコーヒーを飲む。


ヴォルフ「若い奴を死なせて、老い先短いジジイだけがまた生き残っちまった」


カスラ「自分で言うのは嫌ですけど、まだ自分達はマシな方だと思います」


ヴォルフ「・・・」カスラを薄目で見つめる。


カスラ「政府の奴らは、安全地帯の椅子に座って、紅茶を飲み、タバコをふかし、結果を待ってる

    だけです。

    まあ今回も終わって、何とか生き残れましたけど」


ヴォルフ「・・・終わり?」

ヴォルフは“終わり“の言葉に心境が引っ掛かる。


ヴォルフ「本当に終わりだと思うのか? こんなもんは一時の休暇に過ぎない、いつまでこんな事が続く?」


カスラ「仕方ありませんよ、セラディアは大国ゆえに多民族国家、ハミナス人だけじゃ掌握しきれない」


ヴォルフ「・・・違う、掌握する気がないんだ・・・“今度“こそ私もお前も死ぬ」


カスラはヴォルフの吸い終えた葉巻を、自身が持っているマグカップを灰皿代わりにしていいと促す。



ヴォルフは軍人になったことを後悔していた。

大学卒業後は一般の社会人になる事が出来た、でも興味本位で軍人になり、何となく士官になり、除隊する事なく続けていた。

これまで3度の戦場を体験、どれも独立国家を阻止する小さな戦争だが、目の前で多くの殉職者を見てきた、先輩・同期・部下、そして戦友。

軍人を捨て駒扱いする、王族や政府の役人に噛みつきたくなるが、そんな事は思いとどめる程度。

ハミナス人は自分達が1番優れている人種だと自負している上に、独賊の烙印を押されるのを恐れている。


ヴォルフはこれだけは王族達に聞きたい、「(一体いつまで独賊達と戦わなければならない、教えてくれ! どうするつもりなんだ!・・・私達に明日は来るのか?)」



ヴォルフの悪い予感は的中する・・・血泥な残酷すぎる戦争が待ち構えていた。*セラディア兵の武器詳細

名称,A19ライダン

種類,半自動小銃

材質,木製ストック・フェアエンド

利点,7発弾倉、折りたたみ式ストック

固定方式,トグルラッチ

欠点,接近戦に不向き、耐久性低い

接近戦対応,銃剣による刺突攻撃。


名称,TPI30拳銃

全長,約29cm

バレル長,約23cm

マガジン,10発

特徴,やや大きめの小型拳銃

使用方法,バレルを回して取り付け/取り外し

実戦での利点,威力は他の拳銃の3倍

実戦での欠点,使用時にタイムロスが生じる。

          


名称,クロノス手榴弾

形状,丸型、ガラス製の表面

内部,透明な爆薬液体

使用手順,1. 5回縦に振る2. 上部のピンを抜く3. 4秒以内に投げる

タイミング,4秒以上経過後に投げると不発の可能性。

色と効果,赤・火炎弾茶色・炸裂弾白・煙弾


名称,ビックバン弾

形状,楕円形、長さ32cm・直径18cm・重さ10kg

色,黄緑色

威力,クロノス弾の5倍

使用方法,30〜40cmの導火線を点火し、両手で持つ投げた後は10m以上離れる

欠点,導火線が長すぎると敵に消化される恐れ短すぎると自爆の可能性重量のため敵兵の境界線に近づく必要あり。



*戦闘服

防寒着は毛皮付きの大きめのフード、濃い茶色で腰から上半身用

薄黒い黒の半長靴、白の上下隊員服を着用

軍用ヘルメットは黒い剛鉄製=軍隊用語で鉄棒

被った鉄棒は、人並みサイズのフードで覆うことも可能。


*余談

戦闘時にでも革の素材の背嚢を背負い移動、色は茶色。


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