第86話

「知らねーの?ユングの――!!!」

喋り出すアスラットを見て俺と重なるなぁとキセキは思った。


一年のほとんどを海上で暮らすスルムは陸の話にとんと疎かった。

往き来している港町の情報にはキセキたちの誰よりも強い自信はあったが。


「へぇ~…じゃあこれからオリシアの勇姿が拝めるわけだ」

楽しみだとにんまりした。ぴくぴくと尖った耳が動く。


「…エルフは、もう少し上品なはずなんだが…」

「親父はちょっと上品だった。俺様は生まれつき海賊だからな。本物のエルフ知ってんの?」

「時々来訪者があるからね」

「ふーん。ま、俺様は俺様さ」

スルムは前向きだった。

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