第14話

「さっきはごめんなさい」





頭を下げる

冷たい視線が刺さる

顔を上げたくない

怖い







「うせろ」









だけど、告げられる言葉はもっと冷たい






「っ、何も考えてなかった

入学式で頭がお花畑になってた



ちがう、こんな言い訳しに来た訳じゃなくて」







「てめーみたいな女がいちばん嫌いだつってんだろ」






彼の顔はすごく怒ってる

私が怒らせたんだけど

でも、ちがう!







「あ、あなたも!

私の中身を見てくれない!!


深堀して欲しくないかもしれないけど、私だってわかって欲しいところもある!」






「意味わかんねぇよ」






彼は私みたいに何も無いのかもしれない

そんなの寂しいじゃん







「わ、私は!!白雪 蘭!!!

12月24日生まれ!A型!!」







大きな声だったと思う

半分無意識、半分やけくそだった





「え?なに?」





「ちょ、蘭!?」







莉央くんも遥ちゃんもみんながあたしを見てる

だけど止まらない

止まってしまえば変われない







「好きな食べ物はお母さんの手作りオムライス!

嫌いな食べ物は椎茸とゴーヤ!」







「なんだよ」








「家族構成は…お母さんと二人暮し!!!

タバコの匂いは大っ嫌いです!!」








「っ、」








「あとはっんぐ」






「もういい」







口から声が出ない


決して遥ちゃんに止められたわけでも、今にもつかみかかってきそうな莉央くんでもなくて




それは彼が私の口を震える手で抑えてるからであって








「お前の話を聞かなかった俺が悪い


だけど、俺とはもう関わんな」








その言葉を聞いて私は勢いが落ち着いてて

彼を見つめることしかできない





「あ!おい!朔!!」







あたしの横を通る彼の横顔は

凄く儚くて今すぐにでも消えてしまいそうだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

初恋の味 りつ @ritu0723

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ