第93話
あの時の光景が頭によぎって無意識に下唇をかんだ
『波流…?』
電話の向こうで、心配そうな声が聞こえる
「ごめん…」
『ん?』
「あたしのせいで…痛かったよね
もし、あの時あたしが」
『波流』
あたしの言葉を遮る
『俺はあの時波流を庇ったことに後悔はしてないよ
それに今目が覚めたし
結果オーライでしょ?』
電話の向こうで、くすくす笑ってる
『あと、俺は波流が自分を責めてたりしたら嫌だよ
せっかく大切な人を守れたのに、その波流が傷つくのは俺はやだ』
そうだ、あたしずっと自分を責めてたんだ
「うん、ありがとう
おかえり、颯良」
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