第59話

軽く涙を拭う。

「亀島」

「はい?」

「ダンスできるんだよな?」

「ちょっとは…。踊るんですか?」

亀島が薄く愛想笑いを浮かべた。


苦手か?

このくらいのスローテンポならできるだろ


「悪いか?リードしろよな」

亀島は少し困ったように笑んだ。

「…はい」

私に真っすぐ向くと深く礼をした。

手を出して「どうぞ姫」と言った。


姫って可愛さじゃないし


自嘲的に笑って亀島の手に触れた。


軽く手を触れ合い、左右に揺れるだけ。


あの爆発だから、可能性は低いかもしれないけれど…


「マサ、死ぬ前の一服、ゆっくりできたかな――」

それに亀島は答えなかった。


またも私はそのときの亀島の表情を見ていなかった。


私は俯いて泣くのを堪えていたから。

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