社会との距離感
高崎 猿田助
第1話
6月、それは自分のような大学新入生にとって人間関係が固まり始める時期である。授業で仲良くなったもの、バイト先で知り合ったもの、皆きっかけは様々だろうがなんだかんだ友達と呼べる存在がいる、そんな時期である。
そしてここにもサークルの飲み会に参加しようとする男がいた。
「最寄りは…、いつもの駅か。」
佐々木 拓夢、大学1年生。地元から離れた大学に進学したためもともとの知り合いは1人もいない。そんな彼にも入学から約2か月もたつとサークルのメンバーともそれなりの仲になっていた。今日は初めてサークルの飲み会に参加するため大学が終わってすぐに準備してきたところである。まだ乗りなれない地下鉄に乗る。
田舎から出てきて初めて地下鉄を見たが、そんな俺もさすがにサークルの集まりでよく使う場所の駅ぐらいは迷わずに行けるようになった。
駅からでると、もう6月にしては熱い日差しが目に入ってくる。夏もすぐにくるだろうがその前に梅雨がやってくるだろう。あのジメジメした感じは嫌いだ。しかも湿気がまとわりついてくる。冬は暖かい恰好をすればいいが、湿気は対策のしようがない。
まあそんなことより今は目的の飲み屋に到着することを考えよう。このあたりの土地勘はだいぶ詳しくなったつもりだが、飲み会に参加するのは初めてということもあり飲み屋の場所は知らない。
グーグルマップで店の場所を検索して音声案内の通りに歩く。普段遊びに行く繁華街の脇道に入り少し歩くとそのビルはあった。どうやらビルのなかに飲み屋はあるらしい。田舎には一つの店舗につき一つの建物が普通だったのでビルのなかに複数の店舗が入っているタイプはまだ不慣れだ。まずその建物であっているのか不安になる。外から見てとても飲み屋が入っているようには見えない。建物の看板を見るとどうやら地下に飲み屋はあるらしい。薄暗い地下への階段を降りると、のれんが見えてきた。居酒屋”だるま”、どうやら正解だったようである。扉を開けのれんをくぐり、店に入る。
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