Episode13

第44話

哉芽のもとに燈馬から連絡が入った。一度クリニックに来て欲しい。哉芽は悩んだが、燈馬にクリニックを訪れる事を承諾した。


「会わなければ良いのだから。」


心の中で何故か言い訳じみたセリフが浮かんでいた。本当は会いたくてたまらないのに。

クリニックの受付で燈馬が待っていた。哉芽の訪問を歓迎しているようには見えないが、なぜ哉芽を呼んだのか。


「やあ来たんだね。茉白が待ってる。」


「茉白さん?会わない方が良いのでは?」


燈馬は諦めに近い感情が湧きふと笑ってしまった。哉芽が怪訝そうな顔をしている。


「うちのお姫様は頑固でね。頼むよ。」


哉芽は燈馬に促されて茉白の部屋に向かった。

部屋に入って茉白を見た瞬間、胸が暖かくなった。茉白は柔らかい笑顔で哉芽を出迎えた。


「いらっしゃい。わざわざごめんなさい。来てくれてありがとう。」


哉芽は何も言えなくて、茉白の瞳を見つめ続けていた。

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