第38話

優芽はどこか寂しそうだった。


「優芽?どうしたの?まだ何かあるの?」


哉芽の言葉に優芽は目をそらした。


「兄さんが私を嫌うかも知れない。でもやっぱり伝えないと兄さんは救われない。だから私を憎んでもいいのよ。兄さん」


優芽の涙を拭いながら哉芽は微笑んだ。


「何があっても優芽を憎むなんて。優芽は僕の大切な宝物なんだから。」


優芽は覚悟を決めた。


「お母様はお父様に出会う前から心を病んでいて、自分の欲求や感情を抑えられないせいでよくトラブルを起こしていた。お爺様はその度にお金で解決していたの。お母様には精神科の医師もつけていた。」


哉芽は苦しそうに話す優芽が心配だった。妹がこんな辛い事をずっと抱えていたなんて。


「じゃあ父さんと結婚する為に使った薬はその医師に処方させたのか?」


「そうね。お母様は卑怯な手を使ってお父様を手に入れた。でもお父様の心は奪えなかった。茉白さんと会えなくなってもお父様は茉白さんを想って華を活けていたの。茉白さんも明るく振舞っていて、二人を壊さなきゃ終わらない。その位お母様は二人を憎んでいた。」

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