第26話
哉芽は茉白の姿が忘れられなかった。茉白を抱きしめた時のあの幸福感は哉芽にとって初めての感覚だ。
「僕を父さんと錯覚してた時に茉白が呟いていたあの言葉。生まれる。なんの事だ。父さんの罪は僕が考えているものと違うのか。」
確かめる必要がある。しかし茉白に聞くの無理だろう。唇を噛み締めていた時、オフィスのドアが開いた。
「哉芽先生。お客様です。睦月燈馬と言えばわかると仰っていますが、いかが致しますか。」
燈馬から哉芽に会いに来るなんて。
「茉白さんに聞かれたくないって訳か。」
哉芽は息をひとつ吐くと秘書に告げた。
「お通しして下さい。それからこの後の予定は全てキャンセルで。電話も繋がないようにお願いします。後、お客様にコーヒーを。」
哉芽のオフィスに現れた燈馬は少し硬い表情をしている。
「お忙しいところ恐縮です。お時間を頂きありがとうございます。」
哉芽は燈馬の顔を見て確信した。彼は全てを知っている。
「こちらこそありがとうございます。僕もお話をしたいと思っていました。茉白さんは大丈夫でしたか?急に体調を崩された様なので途中で止めて帰りましたが。」
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