第2話 ロイコクロリディウム
2106年
トウキョウ・マルノウチシティ
かつてはバリキャリ・オフィスレディにあふれたこの街は、今や千差万別の性癖に対応可能な風俗街と化していた。
色彩豊かなネオンで照らされたメインストリートでは客引きの間に喧嘩になった風俗嬢のキャットファイト、泥酔して路地にへばりついたオフィスレディをレイプするデーモン、金がないのでラブホテルに入れないカップルがアオカンを披露していたりと、この世の終わりを予感させるような風景が広がっていた。とはいってもこのマルノウチシティにおいてはこのような光景は2~3年前から毎日観測されているので、これが現代日本の日常なのである。
そんな街中を鼠色のスーツを着たサラリ=マンが歩いていた。後ろから見ればなんと冴えない、ジョージャク一歩手前の風貌であったが、その眼球は顔を飛び出し、緑色や黄色に変色しながら空を仰いでいた。
その正体こそ悪性デーモン"ロイコクロリディウム"であった。ロイコクロリディウムは実際小さい寄生虫型デーモンであるが、ジョージャク共の目・口・耳などから侵入し体のコントロールを奪いながら生活している。一度寄生すればその個体が寿命を迎えるまでは適度に食事をとることで生きながらえるので効率が非常に良いのだが、ことこのロイコクロリディウムはジョージャク、特に人間の体を奪うことに快感を見出し、無意味に寄生と殺害を繰り返していた。
名前が長いのでロイコと省略する。ロイコはイモムシめいた目をギョロギョロと動かしながらマルノウチシティで次なる獲物を探す。無理やり縦に引き伸ばしたような眼球を空に向けているのはxyz方向360度のあらゆる方向を観察し、獲物を見逃さないためである。
そんな時、ロイコはヘソ出し胸開きワイシャツに極ミニスカートを履いたトンデモファッションなジョシコーセーを視界の端に捉えた。
「間違いない、スゴイ=オパーイ...」
寄生元のサラリ=マンのせいだろうか、豊満なオパーイに気を取られたロイコは興奮によって目玉を1680万色に高速変色させながら路地裏に誘き寄せられる。
路地裏にはロイコのスーツと同じ色の生き物があちこちを駆け回っている。狭い路地は突き当ると左に曲がる。しかしそこは行き止まりで、ジョシコーセーの姿はなかった。
「ナニッ!?どこへ行ったジョシコーセー!!」
ロイコは興奮のあまり前方に飛び出させていた眼球を再び空に戻す。その時気づいた、自分の後ろに誰かがいると。
姿の主はロイコに気取られたことを悟り、両手の人差し指と中指を立てて重ねる。それは知る人ぞ知る伝統的なニンジャのポーズであった!!
「貴様、悪性デーモン"ロイコクロリディウム"...だな。」
仰々しい台詞の割にカワイイ・ボイスなニンジャはよく見るとニンジャ装束を纏った少女であり、長い髪を後頭部で二つに纏めたクロカミ・ツインテは実際幼さを感じさせる出で立ちに良く似あっていた。
そして何よりもニンジャの構えを取るその腕には規格外のオパーイが乗ってるでは無いか、ロイコは自身の中にわずかに残留したサラリ=マンの声を聴いた。
(このオパーイは先ほどのジョシコーセー!!!)
その瞬間ロイコの股間がパイルバンカーめいた勢いでいきり立つ!
微動だにしない女ニンジャは構えを解いて腕をクロスさせながら、目つきだけを鋭くする。
「私の名はマカゲソラハ...貴様を殺す———NINJAの名前だ!!!!!!」
その瞬間、ソラハと名乗る忍者は目にもとまらぬ速さで腕を振るう。ロイコはサラリ=マン・ソウルが示すレイプ願望を堪えながら渾身の力で地面を蹴る。
ドヒュウゥゥゥウウン!!!
土煙がスゴイ跳躍の軌跡を描き、ロイコはビルの屋上に着地する。しかしその足には既にシュリケンが数枚刺さっている。
そう、ソラハは一瞬にして10枚ものシュリケンを音速を超えるスピードで投擲したのだ。これはニンジャの成せる技であろう。
しかしロイコもまたジョージャク・デーモンでは決して見切れないソラハのシュリケン攻撃を目で見てから動いたのだから負けていない。
「ぐうぅぅ!?俺の足が...しかし15 mを超えるビルだ...すぐには上ってこれまいて...」
安心したのも束の間、ロイコは「トウッ!!」という声が一定間隔で近づいてくるのを感じる。眼球だけをグリンッと動かし先ほどまでいた路地裏を見ようとする、が
そこにはビルとビルの間で繰り返し壁を蹴りながらバク宙で近づいてくるソラハの姿があった。これぞニンジャの技、"アスカ返し"である!!
ソラハはビルの屋上一歩手前で壁を強く蹴り、完全にロイコの上を取った。
「セイィィイハァァァア!!!!!」
「ウマシカヤロウッ!!空中に浮かぶとは狙ってくれとほぼ同義!!」
ロイコは腕を前方に出すと、両腕がそれぞれ四方に割け、合計八本の触手となってソラハに襲い掛かる。
「うぐっぅう!!」
パシィィィン!!シュルルルル!!!
あっという間にソラハは触手に絡まれ、空中で完全に拘束されてしまう。なんと未熟か!復讐心に駆られて冷静さを失ったためである。触手はソラハを逃がさまいと手足だけでなく体中に纏わりつきながら拘束を強める。
締め付けられてスゴイオパーイの形が完全に浮き出てしまっている。どうする!?
その時である
ビクッビクビクッ!
ソラハは不自然に痙攣する。
「拘束しただけでゼッチョウ!?俺はスゴイ級テクニシャンだった...??」
最強のアサシン、ニンジャの名を冠しておきながらソラハはあっさりと捕まってしまった。
ここでソラハというニンジャの生い立ちについて軽く述べさせていただく。
彼女は普通のニホンジンからニンジャとなった身である。
その間たったの6年、短い時間でデーモンと渡り合える実力を身に着けるために彼女は師匠であるシハン・キモスギにニンジャとしての訓練と"肉体改造"を施してもらった。そのため、ソラハの五感は常人のそれをはるかに上回っており、先ほどの触手攻撃も目で見えていたし、脳では理解していた。
しかし、体が動くかは別問題である。ソラハはニンジャとしての実戦経験がほとんどないので実際素人。
そう、ソラハはニンジャとしてのノウハウに欠けていた!!
「フハハハハ!勝ったな、次の寄生先は貴様だ!このサラリ=マン・ボディへの細やかなお礼として犯しまくってからその体をもらい受けるぞぉぉぉぉぉぉお!!!」
ロイコは腕をツリザオリールのようにくるくると巻きながら股間を露出し、引き寄せられるソラハの恥丘目掛けて腰を振る。
(やっっったああぁぁぁぁ!!!サヨナラ!ドウテイ!!!)
ロイコは心の中でサラリ=マンの咆哮を聞いた。なんとなくこの体を捨てるのがもったいなく感じていたところ、股間に違和感を覚えた。
なんとっ!?ロイコが挿入していたのはソラハではなく、ジャパニーズ=ソバヤによくある"タヌキの置物 with ニンジャ装束"であった!!スゴイ!カワリミの術だ!!
「なっ!?なにぃぃぃぃい!!!!!!!!!!!!!????????????」
ロイコはグロテスクな眼球をより一層引き伸ばしながら頭上を見上げる。
そこにはニンジャ装束を脱ぎ捨て黒色のビキニを身にまとったソラハがいた。
そうだ!先ほどの不自然な痙攣はニンジャ術が一つ。"ツチノコの術"である。ソラハは全身の関節を外し、触手から逃れる好機を伺っていた!
「隙アリッ!!」
「小癪なぁああ!!」
ロイコは叫びながらタヌキの置物を投げつけ、再び触手で拘束しようとする。
「同じ手は・・・喰わんっ!!!」
卓越した技術により既に外された関節は元通り!ソラハは投げつけられたタヌキを空中で足場としてロイコに急速接近する!その手にはなんとクサリガマだ!!
クサリガマには名前の通り、カマに鎖が付いたもの。ソラハが使用するそれは持ち手の端に鎖が付いているタイプのものだ。
ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!
鎖の先端には特殊分銅が付いており、巧みに操られた分銅は遠心力をもって巨大なエネルギーにより襲い掛かる触手をはじき返す!
オーマイゴット!!??
全ての触手が跳ね返されロイコとソラハを遮るものは無い。
ソラハはカマをカマえて叫ぶ
「セイヤァァァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「アンギャァァァァァァァアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ザシュゥゥゥゥゥゥウウ!!
縦に真っ二つになったロイコは頭部からはデーモン特有の青い血を、胴体からは赤の鮮血をまき散らしながら絶命した。
「ミナゴロシッ!!」
ソラハはカマについた血を振り払い、ニンジャの構えをとった。
よくやった!ニンジャの勝利である!
ソラハは脱ぎ捨てられたニンジャ装束を手に取ると豊満なオパーイの谷間にしまい込む。
マカゲソラハ、彼女の戦いは始まったばかりである。
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