第16話

「え、彼女?」


彼は言った後、私の方を見る。


「…別に気にしてないから。

っていうか知ってたから!」


竜ちゃんに好きな人がいる事は知ってた。

知ってたけど気づかないフリをしてただけ…。


ずっと一緒だったんだよ、気づかないはずないじゃん。



涙が出そうになるのを必死に止める。


「あ、店長さん。ちょっと花咲借ります」


カウンターに入ってきて私の手を引いて走る。


竜ちゃんが歩いていた方とは反対に。



そして人の少ない室内広場のベンチに2人で座る。


「……」


そして続く沈黙。


「…泣いたら」


「え?」


「さっき泣くの我慢してただろ?

見ないから泣けば…」


「ちょっと止めてよ。そういう優しい言葉かけるの…」


「強がらなくても良いんじゃねーの。花咲の気が強い所嫌いじゃないけど、

たまには弱くても良いと思う」


自分の方に私を抱き寄せる。

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