第22話

今でもはっきり覚えてる


生暖かい感覚


テーブルの下で両手を見つめた




冷や汗が止まらない



胸が痛い…苦しい…














『………居場所、話すの?』



やっと出た言葉は思ったよりも低く、そして重たかった




「そんなことしねえよ。これはふたりの問題だから俺が何かすることはない。…お前がまた逃げなければな」


最後を強調するかのような口ぶりの後、彼はニヤリと笑った。



「で、お前はどうしたい?」


ギラリとした眼で私を見据え、言葉を待った。



『……』



でも、言葉が出なかった。




「…まあいい。再来週までゆっくり考えろ。もし会いに行きたいなら連絡くれ。付き添ってやるから」


何も言わない私に、谷口は「話はそれだけだ」と言って胸ポケットからタバコを取り出し、火をつけた。



「どうした?」


動こうとしない私に谷口は尋ねる。



『…別に。』


私はお店を出る為に腰を上げた。




「あまりひとりで抱え込みすぎんなよ」



顔を横に向け、フゥと煙をひとつ吐き出しそう言うと私に視線を向けた。

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